murasaki

記憶の記録。あるいは独白。
サイコパス / 中野信子

■概要(Amazonより引用)

とんでもない犯罪を平然と遂行する。ウソがバレても、むしろ自分の方が被害者であるかのようにふるまう…。脳科学の急速な進歩により、そんなサイコパスの脳の謎が徐々に明らかになってきた。私たちの脳と人類の進化に隠されたミステリーに最新科学の目で迫る!

 

■所感

知人から勧められて読んだ本であるが、うーん…不思議な本である。

まず、そもそも「サイコパス」が最初から最後まで定義されない。様々な文献を基に特徴は列挙されているのだが、そもそも「サイコパスとは何なのか」が定義されないまま話が進んでいく。ちなみに、著者の話を総合すると、「外見や語りが過剰に魅力的で、ナルシスティックである」「恐怖や不安、緊張を感じにくく、大舞台でも堂々として見える」「多くの人が倫理的な理由でためらいを感じたり危険に思ってやらなかったりするとことも平然と行うため、挑戦的で勇気があるように見える」「お世辞がうまい人ころがしで、有力者を味方につけていたり、崇拝者のような取り巻きがいたりする」等々(他にもいくつもの特徴が随所に列挙されている)の特徴があるとのことだが、本質的に何を指すのかがはっきりと示されない。

にも関わらず、やれ「勝ち組サイコパス」や「負け組サイコパス」がいると言ったり、サイコパスをモテる理由を唐突に持ち出したり(妙に学術から離れた俗っぽい表現や話である)、有名な大量殺人犯から炎上ブロガー、オタサーの姫、果てには織田信長、毛沢東、マザー・テレサまで、サイコパスであった可能性がある等と言ってみたりと、全く言説が腑に落ちてこない。

何より、一冊を通して著者の主張がない。あらゆる学説を部分的に引っ張ってくるものの、この本を通して何を言いたいかが存在しないため、「So What(だから何?)」が付きまとうばかりである。文章表現も、「…かもしれません」「…という考え方もできるでしょう」「…多いそうです」などといった表現が多数存在する。

強いて言えばあとがきに「(サイコパスについては)残念ながら議論が尽くされているとは言えません。(中略)好むと好まざるとにかかわらず、サイコパスとは共存してゆく道を模索するのが人類にとって最善の選択であると、私は考えます」と締めているが、そりゃそうだろうと。「君、サイコパスだね。死刑!」と殺していくわけにはいかないんだから。

 

まあそもそも、帯の妙にゴシップな雰囲気や、冒頭で脈絡もなく「私はかつてMENSA(人口上位2%の知能指数を有する者が入れる団体)のメンバーでした」との記述等、本書の底が知れる個所がいくつもあるわけで、そのあたりで一旦読み進めるか考えるべきではあった。

それにしても知人はよく本書を他人に薦める気になったなと。不思議な思いは募るばかりだ。

 

■メモ

数少ないが。

  • 著者の主張で一貫しているのは、サイコパスは他人の痛みへの共感が乏しい、ということ。
  • 偏桃体は人間の快・不快や恐怖と言った基本的な情動を決める場所。サイコパスは偏桃体の活動が低い、とのこと。

 

以上

 

| 書籍(教養) | 14:53 | comments(0) |
劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか / 山口周

■概要(Amazonより引用)

日大アメフト部監督による暴行指示と事件発覚後の雲隠れ/神戸市や横浜市の教育委員会等によるいじめ調査結果の隠蔽/財務省による森友・加計問題に関する情報の改竄・隠蔽/大手メーカーによる度重なる偽装・粉飾・改竄/日本ボクシング連盟会長による助成金の不正流用や暴力団との交際――いいオトナによる下劣な悪事の数々は必然的に起きている! 

 

■所感

上記のような不祥事に限らず、現在会社に勤める20~30代は常々、自社の幹部の人たちに漠然とした違和感を感じているのではないか。それは「強烈な階層意識」、「規律やモラルより慣例を遵守する姿勢」、「合理よりも情理を重視する仕事の進め方」、そしてそれらが幹部全体に共通しているという「大人たちの同質性」といった性質だと思う。

本書は、そうした性質がどのように生まれていたかを時代背景の切り口から解き明かしており、頭の整理にとても良い。

一方で疑問に感じるのは、その理屈で言えば現在の50・60代が引退した先には、より現在の時代に即した幹部が出でてくるという仮説が成り立つわけだが、本当にそうなのかという気もする。自分としては、生きてきた時代背景による違いはあれど、そもそも人という生き物自体が、従来考えられていたような年齢とともに知的に向上していく前提の生き物ではなく、極端に言えばむしろ一定の年齢を境に幼児化していくような性質を持っているのではないかと思っている。(周辺のおじさんたちを見ると、幼い人多くないですか?)。一概にそう言えるわけではないし、まだ明確な根拠を持っているわけではないが、そういう視点も各社の人事制度(特に等級制度)を考え直すうえで必要になると思う。

 

■メモ

  • P20の表はわかりやすい。ただし、知的水準に関する記載は若干根拠に欠ける。
  • 能力も成果も正規分布ではなくパレート分析している。三流が数の上では圧倒的多数であり、三流が支持される二流がトップに立つ構造がある。
  • 「オッサン」の特徴として、配下の人からのフィードバックがないことにより、自分の人格や人望について勘違いしている人が多い
  • 日本企業では「人的資本」(スキルや知識、語学力等)と「社会資本」(人脈や評判、信用等)が会社の内側に閉じて形成されやすい。結果としてモビリティ(市場価値)が上がらない。わかりやすい例が多くの企業における副業の禁止。これが結果として、エンプロイアビリティを低下させ、リテンション以前にアトラクトができなくなる、という構造にまで発展している。
  • P122のリーダーの変遷(支配型のリーダー→サーバントリーダー)はわかりやすい。支配型リーダーの元においては、最悪「何を言っても無駄だ」という「無気力状態」に陥る。
  • 「人が最も変化しやすいのは、新たな経験と既存の自分が持つ理論がぶつかるとき」(サンドラ・ジョンソン他)
  • 人材が育成できていないのは、良い業務経験を積ませられないことが大きい。それは、良い業務経験を積めるポジションに年長者が座っていることが多いから。

 

以上

 

| 書籍(ビジネス) | 14:14 | comments(0) |
世界で最もイノベーティブな組織の作り方 / 山口周

■概要(Amazonより引用)

イノベーションを生み出すための組織とリーダーシップのあり方とは?組織開発が専門のヘイグループに所属する著者が、豊富な事例やデータをまじえながら、柔らかな文体で解き明かす!

 

■所感

もはやビジネスにおける流行語とも言える「イノベーション」に関する誤解を明確にするとともに、実現するための重要要素である「組織風土」について明快に解説してくれている。

読んで思うのは、いかに今の日本の大企業の環境がイノベーションに適さないかということ。組織の構造やリーダーシップの在り方、個人の属性、階層意識など、解決すべき課題が多すぎる。しかもそれぞれが密接に絡んでいるという難しさもある。もはや、日本の大企業がイノベーションを生み出す体質になるのは不可能とすら感じてしまう。

その解決策だが、これら多数の課題に真正面から網羅的に取り組んでも、結局これまでの失敗を繰り返すことになることが明白なわけで、結局は個々の会社におけるクリティカルな課題の解決に狙いを定め、そこから突破口を開いていくしかないと思った次第。

 

■メモ

本当に多くの示唆があった。

  • 組織風土とは、「経験的に学習された行動・意思決定のパターンの集積」
  • イノベーションの推進において主導的な役割を果たすのは、「若手」か「新参者」(非専門家)。にもかかわらず、日本(韓国等も)の多くの企業の組織では、目上に反論したり意見したりすることに心理的な抵抗がある。しかも、シニア層が組織の大部分や上層を埋めている。
  • 「部下の反対意見に耳を傾けています」→「誰も反対意見を述べないときには、どうやって反対意見を集めますか」→「…」。「聞き耳のリーダーシップ」が足りない。
  • マクラレンドの社会性動機の区分「達成動機」、「親和動機」、「パワー動機」。
  • 人の行動が変わるメカニズムを、「就業ルール」や「オフィス環境」といったハ―ド要因と「リーダーシップ」や「コンピテンシー」といったソフト要因に分けて、絡めて形成できるかが重要。例えば3M社では、戦略的な遊びとしての「労働時間の15%を自由な研究に使ってよい」とする一方、規律「新商品の売上高比率」で厳しく管理することで「イノベーションに関する取引市場」を社内に作っている。一方で日本の多くの企業では、「労働時間を遊び(自由研究)に使うことは許されない」で、結果を出せない責任者が続投し続けるなど「規律もなし崩し」になっている。「遊び」も「規律」もない中で、イノベーションに向けた動機づけを行うことはできない。
  • イノベーションは予定調和では起きない。論路的に正しいことは他社との差別化につながらないわけで、論理的な解を追い求めていった先には他社との差別化はないどころか、スピードですら負けてしまう。
  • 組織が行う意思決定のクオリティは、構成員の能力よりも構成そのものやルール、プロセスに左右される。(ケネディの議論の進め方より)
  • 意思決定で確保されるべき特性は「多様性(バックグラウンド)」「独立性(他社の意見に左右されない)」「分散性(自分なりに情報収集できる手段がある)」「集約性(意見をまとめるメカニズムがある)」の4つ。
  • 意思決定の質は情報量ではない。よって上級管理職の知見が古くなる中で、組織の重要な意思決定を一部上層部にブラックボックスの中で任せることが非合理になっている。
  • リーダーシップのスタイルは、その会社の置かれている状況に応じて変わる。常に指示命令型が悪いわけではないし、常にビジョン型がいいわけでもない。
  • ビジョンに求められる最も重要なポイントは「共感できること」。Where(ここではないどこか)、Why、Howを満たすこと。
  • ビジョンを示すのはトップだけの仕事ではない。上の人間がビジョンを示せていなくても、その立場に応じた形でビジョンを提示することが求められる。

 

以上

| 書籍(組織・人事) | 13:38 | comments(0) |
いい努力 / 山梨広一

■概要(Amazonより引用)

世界最高のコンサルティングファームのトップコンサルタントとして得た豊富な経験から生み出した、生産性が劇的に上がる「仕事の方法」!時間に追われる毎日と不可逆的に決別する、超実践的なアドバイス―。

 

■所感

テーマの広さゆえに、著者の考える「仕事の極意」の羅列になってしまった感のある、よくあるビジネス書ではある。

一方で、一部の指摘はとても鋭利であり、自分の現在の悩みに的確なアドバイスをくれた本でもある。というのも、何気なく立ち寄みした際に目に入った、「いい努力」の「セ超函甬_饌纂困塙佑┐襦廚旅爐瞭睛討興味深かった。「眠る時間を割り、夜中まで産業し、休日も休まずに考えれば、それだけいい答えが出る。限界まで時間を考えろ」という先輩OBに対し、著者はそんなことをすれば「ほかの貴重なことを経験する機会の損失」になると反論した。なぜなら結局そうした努力は「本質に関係のない細部について悩んだり、提案には役立たなかった情報集や資料作成に費やされる」からだという。

自分は、最大の生産性をもって最長の時間働くという(建前の)業界に所属しているが、そこにどう向き合うべきかの解答が見つかった気がした。要はいわゆる「パレートの法則」そのものの話であり、例えるならば、学校のテストでそれなりに勉強すれば80点は取れるが、100点を取るためにはそれ以上の勉強時間が必要になるというケースでどうするかという話である。ビジネスに当てはめたときに、その20点を取るための勉強時間が「いい努力」なのか。本書の言う通り、努力の「質」を今後も問いたいと思う。

 

■メモ

・いい努力「残業=機会損失と考える」、悪い努力「常に細部まで100点を目指す」。

・プロジェクトの最終目標を考えときに、全て報告会で完璧に仕上げようとするよりも、「負けてもいい回」や「クリティカルな回」といったそれぞれの回の位置づけを明確にすることが必要。

・目標設定には「何を達成したいのか」と「どの水準で達成させたいのか」を決めることが肝要。

・主に大企業等で「優秀」の評価が間違っている例として多いのは、「インタフェース優等生」タイプを評価するケース。仕事や当人の見栄えで評価するため、「提案自体はそれほどでもないけど、資料が読みやすい」「大した内容はなくとも、ハキハキと話し、説明がうまい」「何をするにしてもソツがなく、感じがいい」といったタイプが評価されてしまう。そういう人材はいざマネージャーに上がった時にアイディア出しや問題解決など、実質的な領域で成果を出せない。

・全ての課題に向き合うことはできない。「選ぶ覚悟、捨てる覚悟」が必要。

・生産性の高い情報収集のコツは、掘り下げる情報の取捨選択をすること。

・仮説は課題の仮説、解の仮説に分かれる。その理由を1行ずつ計3つ出すことが、自分の仮説の整理・強化につながる。

・「Why」「What」「How」を5回繰り返すと、結論の具体性が増す。(多くの人はこれをせずに表層的な結論付けをしてしまう)

・いい提案の条件の一つとして「状況スペシフィック」であること。一般論の正解ではなく、主語に即していること(当社が…、九州支社が…、今年に…、来年に…といった具合に)。固有の状況に対し具体的であること。

 

以上

 

 

 

 

| 書籍(ビジネス) | 12:48 | comments(0) |
おとなの教養 私たちはどこからきて、どこへ行くのか? / 池上彰

■概要(Amazonより引用)

現代の教養とは「自分を知ること」です。
いま、学ぶべき教養とは何か? 現代人必須の7科目とは、「宗教」「宇宙」「人類の旅路」「人間と病気」「経済学」「歴史」「日本と日本人」。この7つを貫くのは、「自分がどういう存在なのか」を考えようとする問題意識だ。7科目のエッセンスを講義形式で明快に説く決定版。現代人の「生きる力」=教養の本質が一気に身につく! 

 

■所感

以前、母校の中東研究担当の教授が池上彰氏について「あらゆる図式を単純化しすぎている」と批判していたことがあったが、この単純化は著者の最大の長所である。こちらのリテラシーは必要であるにせよ、その単純さゆえにこの本も大変に読みやすく、内容も意外と知らなかったことが多く興味深い。

著者は「教養とは自分を知ること」だと言う。

自分自身の話になるが、自分の家族や周囲の人間はどういう生い立ちでどういう思想を持っていて、それが自分の人格形成にどのように影響を与えてきたのかが、今頃になって気になることがある。自分のルーツを知ることで、わかっているようでわかっていない自分自身の深層心理を知ることができるのではないかと。

本書で述べる人類や日本人の成り立ちといった話を読んだからといって、自分自身に対する大きな示唆を得られるわけではない。だが、著者の単純化した簡易な説明は、難解な歴史を読み解く入り口になるし、それは「自分とは何か」を考えるきっかけになるとは思う。
 

■メモ

・印象に残ったのは2つ。一つは病気が如何に人類の進歩に影響したかということ(例えば第一次大戦はスペイン風邪が終わらせた等)。

・もう一つは、韓国は自分たちの力で国を作れなかったというコンプレックスから、国の成り立ちに物語性を生み出すために反日教育を行ってきたと主張している個所。このへんの反日問題に関する著者の言い分は、事実はどうあれ舌鋒鋭いものであった。

 

以上

| 書籍 | 02:18 | comments(0) |
外資系コンサルの知的生産術 プロだけが知る「99の心得」 / 山口周

■概要(Amazonより引用)

筆者は、二十代を広告代理店で、三十代を外資系のコンサルティングファームで過ごしながら、これらの職場で研修トレーナーとして、さらに三十代半ば以降は、これにビジネススクールのファカルティという立場も加わって、おおよそ二千人ほどのビジネスパーソンに対して「知的生産の技術」を指導してきました。この経験から痛いほどわかったのは、どんなにピカピカの学歴を持った頭脳優秀な人材でも、「動き方」を知らないとまったく知的成果を生み出すことができない、ということです。こういった人たちに対して何より必要なのは、「思考技術」のトレーニングではなく、具体的に手や足をどう動かすか? という「行動技術」、つまりは「心得」のトレーニングなんですね。(本部より)

 

■所感

著者は有名なコンサルタントである。彼の書く本はいずれも示唆に富んでいるうえに、これ以上ないほど読みやすい。特にありとあらゆる歴史や事象を持論の根拠事例として引っ張ってくる手法に定評があり、いわゆる「抽象化思考」の天才なのだと思う。

が、この本においては一つひとつの話の印象が薄いまますぐに読み終えてしまった。これまでの著書に比べ、点と点が線につながっていく感覚がないのだ。要はテーマが広すぎたり、雑多すぎるというということであり、結果としては手癖で書いたような感じを受けた。なんというか、やや魂が抜けているなと。

ただ、これは自分にも問題があり、この本を読むうえでの問題意識がなかったことも大きいと思う。読書時に目的を設定しすぎるのもよくないが、何もないことも当然だが問題だなと思った次第。

 

■メモ

・良い質問を作るコツは紙に落とすこと。言葉で発したときとパソコンで打ったときの言葉の差異がなくなる。

・学習のS字カーブを意識する。情報の集めすぎは学習効率の低下を招く。一分野あたり3〜5冊で十分。

・立場と論理をごっちゃにしない。

・知的作業に閉塞感が出てきたときは問いに立ち返る。

・ある極端なものことの裏には逆側に極端なものことが潜んでいる。(イノベーションを声高に叫ぶ会社ほどイノベーションができていない等)

・ベクトルよりも到達点を伝える。推進・加速・強化・向上などの言葉では何をどの程度がんばればいいのかわからない。

 

以上

 

 

 

| 書籍 | 01:30 | comments(0) |
『会社は頭から腐る / 冨山和彦』と京都サンガ

■概要(ダイヤモンド社より引用)

産業再生機構で41社の企業再生の陣頭指揮を執った著者。再生の修羅場には経営の本質が見えてくる。経営の悪化した企業に共通していたのは、「一流の現場を持ちながら、経営が三流だった」ということ。そもそも経営者を選ぶ仕組みに問題を抱え、相応しくない人がトップに立っているという悲劇をまざまざと経験する。

 

■所感”紊訌反

ビジネススクールで学ぶような「合理」と実際の経営の現場にある「情理」。著者は、前者は当然として後者を洞察し駆使していくことが如何に重要かを、リアルな企業再生の体験から述べている。非常に参考になる。

 

本書の主題は、なぜ多くの企業は客観的な事実に基づき合理的行動をとることができないのか。それは人間が「見たい現実」を見る弱い生き物であるからだと著者は言う。この「性善説」でも「性悪説」でもない「性弱説」に基づき、数々の企業不祥事や大企業経営の問題点、その弱さを克服して腐敗を防ぐための提言を本書は行っている。

一貫したメッセージは「ひとりの人間も、集団としての組織も、インセンティブ(働くうえで何を大切に思うか。金、安定、家庭…)と性格(どんな仕事を好むか)の奴隷である」ということ。例えば、良き家庭人であろうとする一人の社員の行動が、ときに切羽詰まったプロジェクトをこなす他のメンバーにとって悪しき行動になることがある。もう少し大きな話でいえば、職場の平穏を守りたい一心から自社の改革に反対することがある。ともに企業にとって必要な行動と個人のインセンティブや性格が結びつかないためこれらの現象は起きる。

 

そしてそうしたインセンティブの不一致は、日本における「ゲマインシャフト(共同体、村社会)」的な風土により、企業という集団そのものにおいても頻発する。変革を先送りすることが、既存の共同体(立場、職場など)を守るというインセンティブになるからだ。

著者は特に予定調和を重視してしまうような経営者の多さ、及びそうした経営者の台頭を許すバナンス体制、更にはそうした経営者を上に上げてしまうエリート育成の構造に警鐘を鳴らしている。つまり、これだけ不確実なビジネスの環境において、既存の正解を探しに行くことに長けた試験エリートばかりが、組織の予定調和だけを学びトップになってしまう構造である。

 

■所感京都サンガという組織

ところで、この本を読んで思い浮かぶのはやはり京都サンガである。

山中社長ならびに京都サンガという組織に在籍する社員のインセンティブは一体何なのだろうか。

山中社長はもちろん歴代の社長からは、自分が陣頭指揮をとって京都サンガというクラブをより良いものにしていくという気概を感じることがほとんどなかった。いつも掛け声ばかりで、他クラブが真剣に発展を目指す中、重要な意思決定をその時々の権力者に丸投げしていた。要は自身がリスクを負わない状況や静かに任期を終えることを重視してきたように思う。なぜなら、例の「フィロソフィー」という名の予定調和を最も重視する環境の中で生きてきた彼らは、リスクをとる方法も知らなければ、ただの「異動先」において大きなリスクにかけるインセンティブもないからである。

時間と労力をかけて本質的・根本的な変革を目指さず、有名選手の獲得や夢のような計画をぶち上げるだけで経営努力をしたふりをしているのがその現れとも言える。

 

クラブの社員はどうか。重労働・低賃金、そして幹部のポジションに次々とスポンサーから素人が降りてくる中で、クラブの変革を目指すためのインセンティブなど持ちようがあるのだろうか。

 

これはまさしく上記のガバナンスと幹部育成・輩出の構造の話である。サッカークラブという何千人・何万人を動かせるポテンシャルのある投資先を、イチ子会社として扱った結果がこれである。そもそも、資金と価値を相互に提供し合うスポンサーとクラブは本来一方的な関係ではないはずだ。にも関わらず、完全に配下の会社になっている状況に対して改めて違和感しか感じない。

 

そんなわけで本書のタイトル通り、会社は頭から腐る、というか既に腐っている。既にこんな形で臭ってしまってもいる。

J3に降格しろとは思わないが、今年の惨状を受けて親会社が大きな意思決定を下すことは切に願う。地獄のような状況の中で自分自身の力で立つ努力をして初めて、一人前のクラブへの道が開けると思う。

 

■メモ

本書は実践的な内容というよりは大きな問題意識について語られた本だったので、キーワードのみ抜粋。

・組織をはみ出す根性のない人間をリーダーにしてはいけない。組織から離れる経験を早く体験した方がいい。

・人間力=人間性(胆力や他人への影響力、そして目的達成への情熱や執着心)×能力(基本的な経営知識、スキル、「ありのままの現実」を冷徹に見つめる力、そして自分の頭でモノを考え、建設的に解決策を創造する力)

・人間力のベースになるのは、一人ひとりの市井に生きる人々の切ない動機づけや喜怒哀楽というものが理解できるかということでもある。

 

以上

 

| 書籍 | 19:02 | comments(0) |
2018年6月 夏休みの記録

転職に伴い一か月の休暇を得ることができたのだが、本当に思い出に残る一か月となった。少年時代とは違う「大人の夏休み」。

ついに明日から社会復帰するにあたり、この掛け替えのなかった時間を簡潔にではあるが記録しておきたい。

 

6/1(金) 送別会

休暇初日ではあるが、転職に伴う事務処理を行う。夜は同期による送別会。少ない人数で若干の寂しさはあるものの、開催してくれたこと自体に感謝。静かに解散。

 

6/2(土) フットサル大会

一応社員ではあるため会社のフットサル大会に参加。昨年に続く2連覇を目指すものの、決勝のPK戦で自身が外し敗退。複雑な気持ちで終わるものの、夜の飲み会で渡してくれた寄せ書きに素直に驚く。このチームを作って約5年。こういう形で報われて少し感動した。

 

6/3(日) 事務手続き

引き続き事務手続き。夜はトゥーロンを観る。面白いが、相変わらず脆い世代だなと。

 

6/4(月) 買い物

ようやく少し余裕ができたので荷造りと買い物を行う。とはいえ、あっという間になんだかんだ時間が過ぎていく。

 

6/5(火) 昼行バスで帰省&大学時代の友人と食事 

8年ぶりくらいに昼の高速バスを使って移動。時間もあるし新幹線の4分の1という価格に惹かれるも、スマホ閲覧でちょっと酔う。もう少し楽しめるかなと思ったが、結局寝てばかりだった。

夜は大学時代の知り合いと食事。そんなに盛り上がらなかったが大阪駅近くの創作中華はうまかった。久々実家に帰る。

 

6/6(水) 同期夫婦と食事

昼までゆっくりした後、同期夫婦と久々に食事。川端通りの風情のある店で約3時間。

奥さんが言った「恋人は、好きなところが一緒より、嫌いなところが一緒の方が大事だと思う」はパンチライン。

 

6/7(木) 太陽の塔内部見学&大学同期と食事

行ってみたかった太陽の塔の内部に潜入。生命に関わる独特な世界があり、できれば当時の地下・地上展示と併せて見たかった。「人類は進歩していない」という岡本太郎のアンチテーゼはカッコいい。

夜は大阪にいる同期と食事。付き合って2か月で結婚を決めたとな。意外な思い切りの良さ。でも、うまくいきそうなカップルだと思う。

 

6/8(金) 父親と食事&尾道へ

久々に父親とランチ。なんだかんだ最後は背中を押してくれた。リアリストな父親らしく、やりがいだけでなく報酬面をきちんと重視していたことに満足した模様。

そして尾道へ移動。安かったけど坂道の上の素晴らしい宿。部屋から見える森林と尾道水道が今も頭に残っている。

 

6/9(土) しまなみ海道爆走

ぶらぶらと観光地を回った後、旅館のある島まで自転車で爆走。最初は道に迷うなどかなり辛かった。ちゃんと道がわかってからは楽になったが、4時間走ってヘトヘトになる。旅館の飯がめっちゃうまかった。

 

6/10(日) 兄夫婦と食事

尾道から戻り兄夫婦と食事。限られた時間ではあったが、相変わらず家族が元気そうで何より。

 

6/11(月) 祖母宅へ

タイトなスケジュールが続く。この日は5時間かけて祖母宅へ。

祖母と色々な話をできた。祖母もやや耳は遠くなったが、頭の回転は相変わらず。ホッとする。

 

6/12(火) 引き続き祖母宅

引き続き色々話す。自分はほとんど祖母の人生を知らなかったんだなと。相変わらず自分は知らないことが多すぎる。

そして、祖父に振り回されながら仕事を変えて働き続けた祖母のハードワークぶりに驚く。我が家系のルーツを知った、とても良い時間であった。

 

6/13(水) 親戚と食事

お別れのバス停まで半ば足をひきずりながら来てくれた祖母に感謝。本当に太陽のような祖母である。長く元気であってほしい。

夜は実家周辺に戻り、10年近くぶりにお世話になった親戚と食事。

会う前は少し緊張したが、未だ変わらず元気であることに安心。転職先の株価を把握していなかったことに「そんくらい知っとかなあかんで」と優しく言われ反省すると共に、おじさんも40年あまり働き続けた偉大な社会人なんだと改めて思う。地酒のお土産に嬉しそうにしてくれた。

ようやく少し恩返しできたことがうれしく、良い夜になった。

 

6/14(木) 自宅へ

あっという間に帰省を終え帰宅。ちょっと予定を詰め込みすぎたなと思う。

一番印象に残っているのは自分のお世話をしてくれていたおばさんの形見。母親が突然出してきたのだが、コツコツ集めていたという切手集や自分の幼少期のアルバムを残しているとは知らず驚く。アルバムに書かれた最後の一句、「背中に感じる頬の温かさ その温もり 心に届く」に少し泣きそうになった。

 

6/15(金) ロシア旅行の準備&高校時代の友人と食事

もう目の前にはロシア出発が迫っているのでバタバタと荷造り。夜は転職祝いということで友人と食事。高価なボールペンをくれた。相変わらずのプレゼントのセンスの良さに脱帽。

 

6/16(土)〜22(金) ロシアワールドカップ

別記事に記載。本当に素晴らしい旅だった。

 

6/23(土) 休暇

爆睡から起床。休暇もそこそこに残りのタスクをこなす。やっぱり詰め込みすぎたか。

 

6/24(日) 静岡

夜はセネガル戦ということもあり、日本代表に所縁がある旅館でゆっくり回復。人生で最も良い旅館だったかもしれない。なんと贅沢な旅だろうか。

掛川城周辺の施設の縁側はとても気持ちよくて印象に残った。

 

6/25(月) 自宅へ

休息。もう気づけば休暇も後1週間になってしまった。

 

6/26(火) 同期と食事

用事を済ませ同期と食事。自分以外も含めて節目の年。友人の言葉「自分のやってきたことを過少評価する必要はない。そのうえで年齢関係なく周りからなんでも吸収していく姿勢で臨めばいいと思う」が心に残った。

 

6/27(水) 休暇

初めてと言っていいくらい何も予定をいれず。と思ったらほんとに何もできずダラダラしてしまった。

 

6/28(木) 休暇

前日よりは割と色々タスクをこなす。ちょっと気持ちも落ち着いた。

 

6/29(金) 飲み会

前職のメンバーが開催する飲み会に参加。相変わらず職場の割に気楽な飲み会であった。

 

6/30(土) 休暇

家事、ランチ、料理、ワールドカップと充実した時間を過ごす。

これほど楽しいワールドカップをこれだけゆっくりと見れたのは本当に幸運であった。

 

7/1(日) 休暇

昼食を食べて、ブログを書く。

一人になり、色々と支えてくれた同伴者に改めて感謝の思いを感じる。

 

7/2(月) 最後の休暇

残りタスクをこなしながら、ゆっくりと一日を過ごす。そして今、ブログを書いている。

 

 

以上、あっという間だが本当に素晴らしい一か月であった。人生で最高の一か月だったかもしれない。

自分の過去やルーツを知り、色々と陰で支えてくれた人に感謝の気持ちを抱き、旅でそれをふと思い出すような、そんな時間の繰り返しだった。またどこかでこのような時間を持てたらなと。

これからもこの一か月を忘れることはないだろう。そして、また明日から頑張っていこう。

 

以上

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

| 雑記 | 18:51 | comments(0) |
寝ても寝ても疲れがとれない人のためのスッキリした朝に変わる睡眠の本 / 梶本修身

■概要(Amazonより引用)

結構寝たつもりなのに、疲れがとれない…。朝起きたときに、なんかだるい…。それは睡眠のとり方がまちがっているからです! 
ぐっすり眠りたい、朝気持ちよくシャキッと起きたい、疲れを解消したい……、そんなあなたに疲労医学の第一人者で、睡眠の専門医である著者が、ぐっすり眠れて疲れがとれる方法を科学的根拠に基づいてわかりやすく紹介します。
実は、すべての疲労は「脳が原因」で、とりわけ「自律神経の中枢に原因」があります。日中の疲れを回復させる方法は1つ。それは、夜に自律神経が休まるような快適な状態と環境を整える、つまり「質の良い睡眠」をとることです。
「入眠時間より起床時間を統一する」「朝、太陽の光を気持ちよく浴びる」「寝る1時間前にリラックスタイムをつくる」「寝るとき以外はベッドに寝そべらない」「立ち姿と同じ姿勢になる枕を選ぶ」などで、睡眠の質が向上し、スッキリした朝が迎えられるようになります!

 

■所感

睡眠に関する本は有象無象あり怪しいものも多いが、本書は人ぞれぞれにベストな睡眠時間は違うという前提のもと、科学的に誰しもに共通する効果的なアプローチを紹介してくれていて好印象。バランスがとれた内容になっていて違和感を感じず読める。サクッと読める点もよい。

 

■メモ

自分に生かせそうな内容を抜粋。

・就寝時間より起床時間を統一する(休日も2時間以内にする)

・朝、太陽の光を浴びる

・カフェインは6時まで(自分の場合)

・夕食後は夕焼け色の照明にする

・温度は適切に(夏はエアコンを消さない、手を布団から出す、冬は掛け布団をふやさず布団の中を温める)

・寝る1〜3時間前に10分程度お湯に入ると効果的

・優しい光で目覚めるために、月明かりを入れるためにカーテンを少し開ける

・寝る1時間前にリラックスタイムを作る

・眠気を感じるまでベッドに入らない

・寝る際に高音で静かなBGMをかける

・眠れないときはベッドから出る(ベッド=眠れない場所という認識を作らない)

 

以上

 

| 書籍 | 16:56 | comments(0) |
問題解決プロフェッショナル / 齋藤嘉則

■概要(Amazonより引用)

問題解決の理論をチャートと事例を駆使してわかりやすく説明。あなたの市場価値を高めるための実践的教科書!本書は、問題解決のための2つの思考と2つの技術、そして1つのプロセスが紹介し、ビジネスの現場で使えるよう、問題解決のプロセスを体系化したものである。

 

■所感

本書は問題解決の理論を体系化した最初期の本であり、いわゆる思考に関するビジネス書におけるバイブル的な書籍であると認識している。

したがって内容としてはゼロベース思考や仮説思考、MECE、ロジックツリーなどの今となっては当たり前の思考法を掲載している。とはいえ、それがまだ広く浸透していなかった頃の書籍のため、堅い表現をあまり使わずにわかりやすく、且つカウンターパートに対する「調整」的な対応も含めたリアリティのある事例が載っていて非常に参考になる。自分としてはもっと早く読んでいればよかったと思う。

というわけで、発行から20年以上経った今でも色褪せない偉大なテキストである。

 

■メモ

・ゼロベース思考とは、一言でいうと「顧客にとっての価値は何か」を起点に考えること。

・仮説思考によりベストよりもベターな解を求め、都度軌道修正をかけていけばいい。

・「能力というのはやる気さえあれば訓練次第で高めることが可能だが、本人のやる気を高めることはどんなに優れた動機づけや評価システムを取り入れても難しい」ので、「能力が低くても、やる気のある人」の方が「やる気は低くても、能力が高い人」より価値がある。

・課題の設定は3Cの視点で考える。(達成目標とのギャップはないか、競合の優れた点とのギャップはないか、顧客が自社の商品・サービスに満足しているか)

・インタビューのコツは目的を明確にすること。目的とは「課題の設定」「解決策の仮説(出し)」「解決策の検証・評価」である。そしてそこから出た意味合い(SO WHAT?)を箇条書きでもいいから、その日のうちにまとめておくこと。(P172)

 

以上

 

| 書籍 | 20:39 | comments(0) |
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