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記憶の記録。あるいは独白。
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おれ、バルサに入る! / 久保 建史

久保建英日本代表招集記念!

というわけではないのだが、良い本だったので紹介。

 

■概要(Amazonより引用)

2011年、スペインサッカー・FCバルセロナ下部組織に日本人として初入団したのが、久保建英君。原則として地元出身、例外を認めても13歳以上の少年しか入団できない最強軍団に、なぜ9歳の少年が入れたのか? そこには、メンタルと体幹を鍛えた9年間の工夫があった! ベビーカーは使わずにはだしで外遊び、テレビは見せずに週20冊本の読み聞かせ――平凡な会社員一家の非凡な子育てを、父が大公開! 今日から親子でできる、23種の練習メニューつき。

 

■所感

ここのところ毎週久保建英の活躍を見るのが楽しみでFC東京の試合を観ている。彼の魅力は大きく2つあり、1つは局面の判断の良さ。今まで”天才”と言われるような、ドリブルや身体能力に特徴のある若手は多数存在したが、彼らの多くが持たなかった判断力と意思を久保からは感じる。

もう一つはやはりそのコメント力で、常に的確な分析を基に自分の言葉で明確に語ることができる。この年代では”良いコメント”と言われるものの多くも、どこからか借りてきたような月並みなコメントが大多数を占める中、自分の正直な思いを自分にしか言えない言葉で表現できている。この能力は、この年代どころか、サッカー選手全体を見渡しても抜群と感じる。感性だけでない、知性を兼ね備えた能力の高さという意味では、中田英寿以来の才能といった感じがする。

 

で、そんな日本人離れした本人のルーツがやはり知りたくなる。どうすればこんな選手、というかこんな人間が育つのか。それを知りたくて本書を読み始めた。

ちなみに本書が発行された当初は、「親が出しゃばってきたな」「メディアに踊らされてんな」と穿った見方をしていた。これとかこれみたいに。だが実際に読んでみればわかるが、その内容には親のエゴや自己顕示欲は一切感じない。当時過熱していた報道に対して、きちんと自分の言葉で周囲のニーズに対して応えようとする、父親久保建史氏の真摯な思いを感じるのみだ。

 

氏の教育は、「バルサ養成徹底特訓」みたいなものでは決してない。「子どもに何か強みとなるもの、自信になるものを持たせたい」という思いの下、子供の内側の意思を引き出し、そこに全力で寄り添うことを重視している。それが久保建英の場合はたまたま「バルサに入りたい」との思いだっただけ。

ただ、その寄り添い方は半端ないものがあり、様々な情報源やヒアリングを通じてバルサに行くための現実的なルートを探したり、毎朝出勤前に公園で1時間程度、バルサで求められるプレースタイルのための練習を行ったりしている。子供に”夢を持て”という親は多いし、親が思う”こうなってほしい”を徹底して押し付けることはよくあると思うが、子供本位の夢を肯定し、その夢の実現に親がこれだけ手伝うというのは中々できることではない。

 

また、ピッチ外の人間形成面においては、母親の教育方針が実を結んでいる感がある。自分の意思を明確に持ち、ストレートに表現できる人間になってほしいとの思いから、徹底して外遊びをさせる、年長者がいる環境にあえて入れる等、子供が自ら感じ考える環境に飛び込ませ、そこで生まれた子の主体的な行動をとことん褒めて育てている。特に子供の育つ環境については、幼稚園だろうがグループ活動だろうがサッカークラブだろうが、きちんとその組織を観察し、目的をもって加入させている。

少年サッカーレベルだと、自分の経験上、まともにコーチングやティーチングの技術を学んでいないような未熟な指導者もまだまだいる中で、親のこうした関わり方はすごく大事だと思う。

 

実際今の久保を見ていると、こうした教育の影響を強く感じる場面がある。典型的には試合後のコメントだが、久保のコメントの何が良いって、まずプレーとその時の判断を細部まで覚えている”記憶力”、そして自分の思いに正直であろうとする”誠実さ”、更にそれを月並みな言葉に逃げず、自分ならではの言葉に置き換えて話そうとする”主体性”である。

このあたり、本書に書かれている以下のような取り組みを知ると、すごく納得感がある。

  • 考えて話す習慣をつけるー「昨日何があった?」「誰と遊んだ?」「楽しかった?」「つらかった?」
  • 試合後の会話を大事に −「楽しかったか」「何がたのしかったか」、自分の気持ちや感想を言葉にして伝える機会が重要
  • 試合の振り返りはプレイを記憶するため。それができるようになると、改善を元にした練習も上達が早かった

 

本書を読んだからというわけではないが、最近、親が子供の意思を引き出し、時間をかけて関わることの重要性を強く感じる。

子供の人生はもちろん子供の責任が一番大きいし、親に放置されていたとしても子供はそれなりに育つだろう。当然、親に教えられなかったことも自分の体験を通していつか”気づく”ことはできる。ただ、この”気づき”は、気づくのが遅すぎることもあると思うのだ。もっと早く気づいていれば、より多くの選択肢と大きな可能性をもって人生を歩むことができたのではないかと。

 

自分の経験で言えば、周囲の人間が自分の中に夢や目標を持てず、企業のブランド力や報酬といった相対的・外発的な動機ばかりで自分の人生を測っていることがよくある。他人との比較でモチベーションを上げる効果自体を否定するつもりはないし、必要な場面はもちろんあるが、それを突き詰めても、その先に待っているのは常に他人との比較である。その結果、先に待っているのはいつも物足りなさと自分の限界であり、最悪の場合は能力的な壁にぶつかり立ち直れず、身体を壊すことすらよくある。

彼らにとっては、”自分の中の目標を持て”とか”比較でなく自分の達成感を大事にしろ”とか言われたところで、理解はできても今更実践することはすごく難しい。つまり、親の教育が20代後半から30代といった”大の大人”になってから大きな迷いをもたらすという残酷さも見えてくるわけだ。だからこそ久保家は人間形成においてとても良い教育をしているように思える。

 

もちろん久保建英が今後どうなっていくかはわからない。この途方もないような高さの期待値に沿った活躍をしていけるのかはわからないし、そもそもそれは恐ろしくハードなミッションだ。しかし仮にサッカー選手として大成しなかったとしても、久保は自分の意思で自分が満足できる人生を歩んでいけると思う。そしてそれこそが、バルサよりも日本代表よりも何よりも、久保の両親の願いなのだと思う。

 

 

■メモ

  • 子どもに何かを強みとなるもの、自信になるものを持たせたいと考えて子育てしてきた
  • 6歳の子どもがバルサに入りたいと言ったからって、本気になる親がいるのとビックリされるかもしれないが、自分たちにとっては自然な流れだった
  • 長男だけど次男のように育てたい。長男は周りを見てすぐに行動できない。やさしさがあるが、自分の気持ちをストレートに表現できない。次男は長男たちと遊ぶから、待っていても順番がこなくて、積極的に工夫せざるをえない。年の差も気にしなくなる(→外遊び、自主保育)
  • 縦のつながりを重視する幼稚園の方針
  • 外遊びをするためには家の居心地がいいとダメ
  • 出来なかったことができるようになる体験は、子供にとって大きな財産になる
  • 小さいうちは、いつも何かほめることがないか探すくらいでちょうどいい
  • テレビを見せなかった。恐らく情報量の多さとスピードン位圧倒され、何も考えていない状態になる。実際、子供が魂を抜かれたような顔を見せる時がある
  • 考えて話す習慣をつけるー「昨日何があった?」「誰と遊んだ?」「楽しかった?」「つらかった?」
  • ミニゲームは必ず子供の勝ちで終える
  • 5〜8歳のプレゴールデンエイジは、様々な刺激を体験させることが重要、ゴールデンエイジ(9〜12歳)は新しい動きを即座に身に着ける臨界期、スキルを獲得しやすい、足元の技術を身につく時期
  • とりあえず蹴っとけシュートはやめさせる
  • 子どもが嬉しいのは「ほめられたとき」「勝てたとき」「うまくいったとき」
  • 試合後の会話を大事に −「楽しかったか」「何がたのしかったか」、自分の気持ちや感想を言葉にして伝える機会が重要
  • ある日息子から「やりたいサッカーと違う」と相談があった。私は「コーチにやりたいサッカーを伝えたらどうか」とアドバイスした
  • フロンターレでは年に一度保護者会がひらかれ、チームの育成方針が説明される
  • 試合の振り返りはプレイを記憶するため。それができるようになると、改善を元にした練習も上達が早かった
  • 欧州の名門では何歳で何を学ばせるか明確な指針がある
  • 「サッカーに教えすぎはない」が、選手自身が考える余地を持たせることが重要。試合中は子供の判断を尊重し、「クリア」「シュート」「戻れ」「パス」などのプレイを決定づける指示をしないこと
  • スクール選択に目的をもつ −_燭魍悗个擦燭いを選ぶ前に明確にしておく、↓,六期によって違う、,鬚ちんと先方に核にする、こ謄好ールの情報はスクール性保護者の情報を参考とする、ノ習の体験をする、ΔΔ泙せ劼参加しているか、ともに切磋琢磨できるか、Д魁璽舛一人ひとりをみてくれているか、┘魁璽舛真剣に考えてくれているか

 

以上

| 小説・エッセイ | 23:35 | comments(0) |
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