murasaki

記憶の記録。あるいは独白。
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高校サッカーボーイズ U-16 / はらだみずき

■概要(Amazonより引用)

2011年、高校生になった武井遼介は、関東の強豪サッカー部に入部する。東日本大震災から1ヶ月、ふつうにサッカーができる現状に葛藤を抱きながら、遼介は新入部員約50名でスタートした部活に励む。しかし、全国大会を視野に入れたレベルの高い部内では、1年生チームの中ですらポジションを確保できずにいた。やがて1年生は2チームに分裂し、紅白戦が開催されることに。勝敗によって両チームの選手を入れ替えるサッカー版“大富豪”という特殊ルールで、遼介はチーム内での立場を思い知らされ、夏の1年生大会、ルーキーズ杯へと向かう―。無名の高校生16歳、リアル青春サッカー小説。

 

■所感

このシリーズは第1作からずっと読み続けているのだが、とてもリアルな少年・学生サッカーを描いており本当に面白い。フィールド上だけでなく、学校生活や私生活で起こるいざこざやちょっとしたすれ違いによる不器用な会話のやりとりやその心理描写が生々しくていちいち心に刺さる。

例えば以下のシーンなどまさに”あるある”で、かなり湿気の高かった感がある自分の高校サッカー部の光景が苦々しく蘇ってくる。

 

”「なあ、腹減ったから、どっか寄ってかね?」

米谷の気怠そうな誘いに、宮澤や健二ら何人かが相槌を打った。春休みから練習に参加していたグループだ。

「俺もいいかな」

巧の声色が遠慮がちになった。”

 

今回から高校編だが、高校の部活といえばそれまでに比べ初対面のメンバーばかりが集まることになる。その結果まず最初に起きるのは、同世代内でのヒエラルキーの形成である。高校サッカー部の一人ひとりは自分のクラスや地元の中学に戻れば誰もがヒエラルキーのトップにいる奴らばっかりの中で、部活とその他における自身の二面性に多くの者が戸惑い、受け入れられず傷つき、一方で運よくヒエラルキーのトップに座った者も何か月後かには裸の王様になっていたりする。

後から振り返ればつまらんことで悩んでいたと思えても、当時の部員にとってはその組織でどのポジションにいられるかが、特に1年生の頃は全てである。それは必ずしもサッカーの実力だけで決まるものではない。中学時代の名声、知り合いの多さ、先輩からの可愛がられ方、ワルさなど、多くのノイズが存在する。この揺らぎの中で選手たちは自己を確立していくのである。

 

サッカー漫画にしろ小説にしろ、主役はじめ登場人物の大半は全国区もしくはワールドクラスになっていくというケースが非常に多い。そんな中本書は、決してサッカーエリートではない、"無もなき"選手たちを取り上げるからこその、思春期のリアリティを感じられる貴重なサッカー小説であると思う。

 

以上

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