murasaki

記憶の記録。あるいは独白。
マーケティングとは「組織革命」である。 個人も会社も劇的に成長する森岡メソッド / 森岡 毅
評価:
森岡 毅
日経BP
¥ 1,728
(2018-05-24)
コメント:マーケティングとは「組織革命」である。 個人も会社も劇的に成長する森岡メソッド / 森岡 毅

■概要(Amazonより引用)

USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)を劇的な再生に導いた後、
マーケティング精鋭集団「株式会社 刀」を設立、
マーケティングによる日本の活性化に邁進中の戦略家、森岡毅氏の待望の最新刊! 

なぜ、日本企業はマーケティングを活かせないのか?
なぜ、あなたの提案は通らないのか? 
実戦経験を極めた著者が、あなたを成功に導く<組織論>

【第一部】 組織に熱を込めろ! 〜「ヒト」の力を活かす組織づくりの本質〜

【第二部】 社内マーケティングのススメ 〜「下」から提案を通す魔法のスキル〜

【特別対談】 成功者の発想に学べ! 〜起点となって世の中を変えた先駆者たち〜
 

■所感

やや★2寄りの★3という感じ。

というのも、本書は3部作だが、3部はそれぞれ独立しており、タイトルにつられて組織活性化観点で本書を手に取った場合はややボリューム的に物足りなさが残る。特に、第一部においては、挙げられる施策が「会議」の在り方を中心とした内容になっており、ある程度参考にはなるものの、その導入のHowやそれ以外の施策についてはあまり触れられていない。

また著者の書籍では珍しくやや全体の構造がわかりにくいのも難点で、森岡氏の会社のためのマーケティング先行で急いで発刊した感もある。

 

一方で自分としてはそれほど興味がなかった第二部は、社内マーケティングという珍しいテーマを具体的に掘り下げており、納得感がある。結構面白い。

 

尚、第三部はあくまで対談で従来の主張を簡潔に述べているに過ぎず、あまり価値は感じなかった。

 

■メモ

【目指す組織】

  • マーケティングドリブン(消費者価値基準)な組織は、市場構造に合わせて自己変革できる生存確率の高い組織
  • 会社を支える機能:.侫.ぅ淵鵐好轡好謄燹↓▲沺璽吋謄ングシステム、生産マネジメントシステム、その3つの基盤となっている「組織マネジメントシステム」
  • マーケティングドリブン(消費者価値基準)な人や組織を作る第一歩が組織マネジメントシステムの構築

 


【組織の本質的問題】

  • 性別差、年齢差、役割差が組織内コミュニケーション不全を起こす。それが組織のボトルネックになる。
  • 人間の本質は自己保存である。自己保存は自分の生存確率を最優先にすること
  • 例:頑張って勉強するのもいい生活をするための自己保存、人に親切にするのも自分の存在価値を確認したい自己保存、結婚して子を生すのも遺伝子の自己保存、著者が本を書くのも自分の思索を誰かに伝えて遺したい自己保存
  • 「個」の自己保存にとって「群れ」(会社)は手段である。一方で会社は会社存続を第一目的に掲げているので、組織と個人は利害相反の関係にあることを念頭に置く必要あり


【組織変革の要点】

  • 組織にとって正しい行動をとることが個人としての自己保存を実現するような仕組みが必要
  • ’箴絽上のために人々が好ましい行動を取る確率を上げる(マーケティングシステム)
  • → メモ:上記の建付けと重複している
  • ∩反イ僚斗徃獣任里燭瓩某諭垢好ましい行動を取る確率を上げる(意思決定システム)
  • 2饉劼望む方向へ人々を動機づける確率を上げる(評価報酬システム)


【意思決定システム】

  • 会議とは人を働かせるための儀式。自己保存の意識にしたがい、会議出席者は人前で恥をかきたくない、よく思われたい、という感情を利用する。
  • 「誰がどこで何を決めているかわからない組織」は、誰もが公に恥をかかなくてすむ仕掛けになっている
  • 自己保存をうまく利用する。議論ができ、意思決定者が明確な、意思決定を必ず行う(ガチンコの)会議があれば、そこに徹底的な準備をしてくるし、さらに全体的な利益に反する発言は逆に自己保存のリスクがある。
  • USJでは、社長が出席しないオープンな議論・意思決定の場を作った(社長と各部門の一対一では情報も共有されない)
  • → メモ:ただし、自己保存リスクに基づく会議はベターではあるが、ベストなのか(準備はするけど、発言自体は委縮する可能背もあるのでは)
  • 会議のアクションサマリー:〔榲、結論、7誅世忙蠅辰人由、し誅世亡陲鼎関係者が次に取るべきアクション(誰がいつまでに何をするのか?)を速攻でまとめて関係者に提出するルール
  • これらにより意思決定を完全に見える化した
  • 但し、活発な議論が行われるまでは1〜2年かかった

以上

| ビジネス書(組織・人事) | 01:41 | comments(0) |
心理学的経営 個をあるがままに生かす / 大沢 武志

■概要(Amazonより引用)

人間をあるがままにとらえる「個性化」と「活性化」のマネジメントとは。
江副浩正氏のもと、リクルートで30年にわたり組織における人間の「感情」や「個性」を深く追求した著者の、実務と研究に基づく全く新しい経営論。
1993年に刊行された本書は今なお、「人材経営」の原点として求める声が多い。 四半世紀の時を越え、電子書籍・プリントオンデマンドで遂に復刊。

 

■所感

概要にもある通り、長らく絶版の状態が続いていた本書。中古価格で約5万円という異常な価格がついていたが、最近ようやく電子書籍及びパーパーバックで再発が始まった。

本書の価値は、組織・人事系のビジネス書では稀有とも言える徹底した科学ベースの記述にある。全ての言説が豊富な心理学の研究結果を基にしており、そこに著者が経営に携わっていたリクルートの実務的成果が織り込まれることで、これ以上ないほどの説得力がある。また、組織・人事の各テーマが広く解説されており、心理学の基本的なポイントを効率的に理解できる。絶版が不思議なほどの内容の充実ぶりである。

そんなわけで、全ての人事パーソンがまず読むべき、組織・人事のバイブルであるとはっきりと断言したいと思う。

 

■メモ

  • 「道具理論」:「努力」には2つの種類がある。(努力がある成果に結びつくと主観的に思う期待) × (成果が報酬につながると主観的に思う期待 × 報酬の魅力度)
  • 「職務特性モデル」:内発的動機付けが高まる5つの要素「職務設計の中核的五次元」.好ルの多様性、▲織好アイデンティティ(課業の一貫性)、仕事の有意義性、ぜ律性、ゥ侫ードバック(自分のせいかを確かめることができるか否か)。ただし、当人の能力や技能が著しく低い場合、現在の給与や作業条件などの環境条件に不満を持っている場合は5つのどれを上げても内発的動機は高まらない。
  • フィードバックの効用 : ,△泙蠅北槁犬ら遅れすぎている人にとっては、フィードバックの情報が諦めにつながる場合がある。最も効果的なのは中程度の進捗が遅い者に対してということがわかっている、∩瓩瓩僕燭┐進がいいという原則、フィードバックによる業績改善効果が顕著にあらわれるのは達成意欲が高い場合
  • リクルート:一言で言えば自由なマネジメント風土。個々人の自由裁量の幅を可能な限り拡げ、しかも多様な能力の要求されるマルティプルな仕事に挑戦できる仕事の環境と風土づくりの実現。
  • 目標は具体的で明確なほど、エネルギーを方向付ける力になりやすい。困難な目標の方が一般的にモチベーションが高まるが、「困難」はその目標が個人にどう需要されるかにかかってくる。目標設定理論では、背伸びをすれば届きそうな目標が効果的と言われる。
  • 集団目標がある方が高い業績を生む
  • ホーソン効果:何か特別なことに特定のメンバーを選んで参加させることで、その集団のモラールが高まること
  • 集団凝集性:集団の規範にメンバーの行動を同調させようとする力が働くのは、その集団にそのメンバーを惹きつける魅力があったり、メンバー間に仲間意識があるような場合。このような集団のメンバーをその集団に留まらせうる求心的な力が働く強さを集団凝集性という。凝集性の高い集団では、心理的な帰属意識が強く、メンバー間の連帯感や仲間意識も強い。仕事における不安や緊張が少ない。
  • 活性化は、既成の構造としての秩序を破壊することから始まる。既成の価値体系、暗黙知のうちに受容された行動規範に提示される。さらに今のままではだめだと現状を厳しく自己分析して、昨日までの成功体験を否定する。こうした現状の自己否定が組織に葛藤と緊張を引き起こし、組織内の均衡状態を破壊していく。これがカオスの演出としての最初の戦略。
  • 組織活性化のポイント:〆陵僉↓⊃融異動、6軌蕁↓ぞ集団活動、ゥぅ戰鵐函共通しているのはカオスの演出。
  • リクルートの研究結果によるリーダーシップ行動を構成する4つの因子:‐霾鹹鷆 併纏の方針や計画、知識や技術の部下への提供)、⊃μ廓塾蓮平μ蛙觜塲塾蓮計画力、問題解決能力)、G枸検壁下の気持ちの受容、感情への配慮)、て栂紂壁下の仕事のチェックや目標達成への要望)
  • リーダーシップ行動四因子(上記に基づく二次調査):〕徊樟(指示を与え、能力の最大限の発揮を求め、生産性を高めることを指向した行動)、共感性、D粍媽(意味のある情報の提供)、た頼性(部下から見て能力的に人間的に信頼に値するかどうか)
  • 企業人適性の三適性:/μ嚇応、⊃場適応、自己適応(対仕事、対人、だけでなく自身の価値基準や情緒的な適応性、自己本来の価値の実現といったどの程度満たされるか。近年の新たな転換的な基準)
  • ユングの知覚と判断の二大心理的プロセスは問題解決のプロセスにも当てはめることが可能。ヾ恭弌幣況を調べる)→直観(役立ちそうなあらゆる手段を探すステップ)→思考(解決策の選択)→感情(周囲への影響を配慮し検討するステップ)。どのタイプの人も自分の最も得意なとところを存分に発揮したほうがよい。
  • 外向型の人は内向的な一面を持っていないわけではない。自分にとって使いやすい特異な機能をもっぱら使うので発達が促進され、結果としてタイプが形成される。
  • 日本の企業社会においては、優れた管理者はしたたかな自信家。民主的・参画的リーダーシップよりも実は専制的なリーダーシップをよしとする本音を持っている節がある。(エドウィン・ギゼリ博士)

 

以上

| ビジネス書(組織・人事) | 16:14 | comments(0) |
組織の未来はエンゲージメントで決まる / 新居佳英、松林博文

■概要(Amazonより引用)

働きがいも、生産性も、すべての鍵がここにある。
業績との相関が科学的に証明され、スターバックスやザッポスなど世界の成長企業が重要視する「エンゲージメント」とは? 注目のHRテック企業の経営者とビジネススクール人気講師が実践事例と理論をもとに語る、組織・チームづくりの新常識。

・日本企業は「やる気のない社員」が7割! ? 有名大企業からも離職が相次ぐ理由
・生産性、収益性、離職率との相関が明らかになった「エンゲージメント」の初の入門書
・肩書の廃止、全社員が株主、子連れ出社OK・・・アトラエの組織づくりの施策を大公開
・老舗の製造業から新興IT企業まで、さまざまな企業の取り組み事例を紹介
・経営者・人事担当者・マネジャー必読! モチベーションよりも大切なもの

 

■所感

最近よく耳にする「エンゲージメント」の入門書としてはまずまずと思う。各記述の根拠が明確でないケース(主観)や具体的取組は施策事例の簡単な紹介に留まるが、概念を理解するには十分だろう。

 

エンゲージメントという指標自体については、満足度やロイヤルティといった従来型の一方向的な指標に比べ納得感がある。ただし、では「何のためにエンゲージメントを上げたいか」がリテンションだけに留まるようであれば、共感性は乏しく、やはりエンゲージメントは上がらないのだろうなと思う。

 

■メモ

  • エンゲージメントの定義:組織や職務との関係性に基づく自主的貢献意欲
  • タワーズワトソンによる定義:従業員の一人ひとりが企業の掲げる戦略・目標を適切に理解し、自発的に自分の力を発揮する貢献意欲
  • エンゲージメントには従業員エンゲージメントとワークエンゲージメントが存在する。どちらかが低くて、どちらかが高いということもありうる。
  • 従業員エンゲージメント:企業・組織と個々の社員の間の関わり合い。組織に対する自発的な貢献意欲。
  • ワークエンゲージメント:「仕事の内容」と個々の社員の関わり合い。主体的に仕事に取り組んでいる心理状態を表したもの。
  • CEB社の27か国、10業種の59社5万人の調査によれば、エンゲージメントの高い従業員が1年以内に離職する可能性は1.2%、低い従業員は9.2%。
  • HRBのレポートによればエンゲージメントとサービス品質には相関がある。
  • エンゲージメントと組織の形態は別の問題。組織のビジョンに合った適切組織形態をとることが重要。
  • 会社の置かれた環境、業務の内容・特性、人材のレベルやタイプの3つのファクターがエンゲージメントが高い組織をつくるうえで重要。
  • 組織の状態を点でなく線でとらえること。様々な要因で日々変動する。
  • サバティカル3:3年ごとに1か月の休暇が取れる制度
  • 『バリュー・クリエイカー』によるビジネスにおける価値の生み出し方(2軸、4象限):価値と管理、協働と競争。自分の仕事がどこに比重が置かれ、どういう状態にしたいかを考える参考になる。
  • エンゲージメントを高められる人に共通する資質、.咼献腑淵蝓爾任△襪海函↓⊃爾ぢ佻辰できるコミュニケーション能力、人間関係・信頼関係を築く力

 

以上

 

 

 

| ビジネス書(組織・人事) | 23:35 | comments(0) |
企業内学習入門―戦略なき人材育成を超えて / シュロモ ベンハー (著), 高津 尚志 (翻訳)

■概要(Amazonより引用)

過去10年間、企業の人材育成は満足な成果を上げていない―?人材開発の重要性がますます叫ばれていながら、自社のラーニング部門の実績に満足しているビジネスリーダーはわずか20%程度。大半の企業では、確たる成果が見られないまま、従来型の研修プログラムが続けられているのではないか。いま必要なのは、人材開発の目的を根本から問い直し、自社の戦略と整合した企業内学習の形を見出すことだ。知識の獲得だけでなく行動の変容を、個人の能力向上だけでなく組織の業績向上をもたらす企業内学習(コーポレート・ラーニング)の要諦を、世界トップクラスのビジネススクールIMDの教授が解説。

 

■所感

表紙がシブい!

本書は企業の人材開発部門目線でOff-JT(主に研修プログラムの体系)を戦略的に構築するための概論である。そもそも戦略部門化が遅れている人事部門の中でも、特に戦略的で定量的なPDCAが回っていないのが人材開発部門である。要はやりっぱなしで、良かったのかどうかもわからず、行動変容につながっている感もないのが多くの実情と思う。そこで本書は、大前提の戦略策定から社内に向けたブランディングまでの包括的なステップ全体を説明している。

最も読みたい章であった「価値の実証」(研修のKPIをどうやっておくか)などの肝心なところがやや抽象的な話に終わっていたり、翻訳特有の固有名詞の意味を分解しきれていない箇所もあるところは残念だが、全体としては構造がわかりやすく、確かに「入門」としては良い本だなと思う。

 

個人的に印象に残った点は2つ。1つは、企業の置かれた状況を踏まえた「研修の意味づけ」が改めて重要だと言うこと。脈絡のない研修では本人も部署もどう仕事につなげればいいのかわからない。

もう1つは、個人ではなく、チーム(部や課など)全体に対する研修の有効性である。ロジカルシンキング研修だろうが、財務研修だろうが、要はチームの仕事においてロジカルにまたは定量的に物事を考える気風があるかどうかに、その後の伸びは関わってくるわけで、対個人ばかりじゃあまり意味を成さないのではないかと。このあたり、チームビルディングも含めた有効な研修開発の視点になりうるかもしれない。

 

■メモ

  • 人材開発のミッションにはリアクティブな目標とプロアクティブな目標の両方を入れ込むのがよい
  • スコープ −.機璽咼垢鯆鷆,垢戮対象集団の特定、対象集団ごとの戦略的ラーニング目標の特定、社内のその他の学習システム、体制や人材との関連性(接点)の特定
  • ラーニング部門の基本的な役割 −.廛蹈妊紂璽機次淵蕁璽縫鵐亜Ε廛蹈瀬トを開発する)、ディストリビューター(ラーニングプロダクトを提供する)、プロバイダー(ラーニングのプロセスを支援する)、ぅ屮蹇璽ー(知識・助言を売るコンサルタント)
  • ポートフォリオ −誰に、ではなく、何を、に基づいて作成する必要がある。一つの目標に対し、ターゲットにすべき集団と提供すべきプログラムを割り当てるとよい。一方で説明・整理用に従来的な、対象集団とラーニング計画のマトリックス図も用意しておくとよい
  • 行動変化というトピックへの言及が欠けていることが多い
  • 研修のメソッドは、既存の調査からはどれが本質的に優れているのかを特定することはできない
  • スキャフォルディング(足場づくり)とは、.薀ぅ鵐泪諭璽献磧爾妨修や支援を施し、彼らが従業員の学習をうまくサポートできるようにする、▲螢侫譽ション(振り返り)のための学習者同士のブログを導入する
  • テストを行う(テストを行った方が学習内容を憶えているという調査結果がある)
  • 「振り返りのきっかけ」をつくる
  • 携帯メールを使って簡易アンケートの実施や結果報告を行う
  • アウトソーシング発注者の大部分は、受注者の仕事ぶりについて「非常に満足している」と答えるのは三分の一だろう
  • 参加者のアンケートのみに頼るな
  • マイスターの信頼の方程式 信頼=(信憑性(専門知識や存在感)+信頼性+(頼りがいや一貫性)親密さ(オープンさ))/自己志向性(自分の都合へのこだわり)
  • ラーニング・ソリューションの開発については、一方でいまだに従来のアカデミックな学習観に縛られながら、他方で目を奪うような最新テクノロジーにすっかり翻弄されている
  • アカデミックな学習が主にインプットを重視しているのに対し、企業内学習はアウトプットをどう応用するか、の違いがある

 

以上

| ビジネス書(組織・人事) | 01:33 | comments(0) |
定年破壊 / 清家 篤
評価:
清家 篤
講談社
---
(2000-09)

■概要(Amazonより引用)

定年からの引き算でない人生を設計する方法
定年を境に過去の実績や栄光が消え去るのはおかしくはないか。今や、定年は反社会的制度である。引退の時期を自分で決め、豊かな人生を築くための参考書。

 

■所感

年功序列は、人が年齢とともに成長し能力が高まっていく前提の基に構築されている仕組みであるが、ではなぜ一律の年齢で会社から追い出される仕組み「定年」が存在するのか。よく考えればおかしな話である。

本書は、この矛盾の裏にある本音と建て前を定年制度ができた時代背景から明らかにするとともに、それが今後の世の中において如何に非合理的な仕組みであるかを鮮やかに説明してくれている。何より定年を軸にした年功序列型の仕組みが、若者だけでなく、シニア世代、もっと言えば世の中全体にとってマイナスの影響を及ぼすことを客観的かつ論理的に述べている。多くの企業人が抱えているであろう、漠然と感じる年功序列の仕組みに対する不満・不安にしっかりと根拠を与えてくれ、個人的には読後に非常に納得感が残った。

それほど有名な本ではないと思うのだが、これは名著ではないだろうか。特に日系企業に勤める方で自身の会社の在り方に問題意識を感じている方に強く強くお勧めしたい一冊である。

 

また、本書は約20年前に発行された本ではあるが、現在の自分が本書の内容に強い納得感を感じているという事実が、如何にこの期間の間に企業が変わってこれなかったかを表しているともいえる。この変化の乏しさが、まさに定年を前提とした仕組みが生み出しやすい”既得権益”の結果であるとも考えられ、問題の根深さを強く感じる次第である。

 

■メモ

  • 定年後の第二の職場では、過去の栄光を忘れて一から出直す覚悟をせよ、といったアドバイスがされたりしている。(略)働く意思と仕事をする能力がある人を年齢が来たら辞めさせる、そのような制度を前提に、「昔の栄光を忘れよ」などと説教するのは、考えてみれば転倒した議論と言わざるを得ない
  • 定年という制度をもてなくったため、一般的なアメリカ企業がとても困っているという話はほとんど聞かない
  • 働く意思と仕事能力をもった高齢者に、できるだけ長く本格的に働き続けてもらうということである。結果として社会保険料や税も負担してもらい、社会に支えてもらうようになる時期を後に贈らせてもらえることになる
  • 経営者が60代で就業可能なら一般サラリーマンはなお可能と考えるのが自然であろう。自ら60代、70代の経営者が庭園廃止に反対するのは、賃金コストがかさんでしまう、年功的な賃金体系のため
  • 実は年齢差別禁止法によって定年退職制度が否定されているアメリカでも、高給をもらい多額の退職金を受け取るような圭江管理層については、定年の設定を例外的に認めている
  • リストラで中高年を真っ先に雇用削減の対象とするのは、まず何よりも彼らの賃金が高いから
  • 労働組合は、定年廃止や定年延長の前提である年功賃金のフラット化にも賛成していない。もともと生活給という意味での年功賃金は、労働組合にとって能力や業績本意の賃金より望ましい。特に中高年の組合員にとっては既得権益である
  • 年功的な賃金体系が定年を必要とする。賃金コストはどんどん高くなるし、賃金が上昇し続けるのであれば、個人は自発的には会社を辞めようとしない
  • ラジアーの法則。若年層での貢献度>賃金、シニア層での貢献度<賃金。年功制度とは長期で能力と賃金とバランスさせる仕組み
  • 投資の回収期間が若い従業員ほど長いという考え方は、技術構造が安定的な場合にのみ当てはまる話。陳腐化が早ければ短期間しか技術を使えず、そのメリットを享受できない
  • 「年を取った人をえらくする」と「年を取った人は邪魔だ」は逆のことのようでその根っこは一緒。年を取った人を偉くする仕組みだから年長者にいつまでもいられると困る
  • 子どものときには勉強しすぎる、大人になったら忙しすぎる、年をとったら暇すぎる、後者2つは密接な関係にある
  • 賃金を年齢とは関係なく、フラットにすればよい。究極的には賃金と貢献度を常に一致させる仕組みにすればよい
  • プロフェッショナルの条件 −―ざ箸必要、外部水準に照らして評価できるか、4覿抜岼榮阿魏椎修砲気擦觧伝箸澆梁減漾↓げ饉劼任呂覆仕事への帰属意識
  • 社内の研修なども会社の一方的な押し付けでなく、個人の意思で決定させるべき
  • プラザ合意により、日本企業は商品やサービスを大量に生産するコスト競争ができなくなり、付加価値で競争しなければならなくなった。付加価値競争の時代では、社内の様々な部署を経験し組織運営に精通した年長者が必要だったが、付加価値時代ではプロフェッショナルが必要になる
  • 労働時間短縮による生産性向上という因果関係も実際には存在する。会社に長くいることを前提にした無駄な労働が残っているため
  • 家族などのゲマインシャフトと企業なド利益追求集団であるゲゼルシャフト、後者ー機能集団に情愛観念が持ち込まれてしまっている。情愛を基本とする仕組みなら、年上の人を無条件に尊重するのも自然だが、この企業一家・企業人間が問題視されている。会社人間になった結果、地域社会や家庭といった場への帰属意識が低s菓子、企業以外の集団の活力低下を招いている。年長者が尊重されなくなってしまっている。つまり、本来機能集団であるべき企業が疑似的情愛集団になってしまったため、本来の情愛集団の中で尊重されるべき年上の人たちが尊重されなくなってしまっているという皮肉な現象が起きている(定年退職=定年離婚)
  • 雇用保障のために必要な労働市場の強化のためには、むしろ年齢による差別をなくすことが必要
  • アメリカでも20代まで急こう配な年功的な賃金制度となっている。このあたりは先輩は無条件に後輩より偉い状態にないと、教える気も失せるから
  • 雇用にかかわる政策(年金、医療保険)なども、定年を前提にしてしまっている
  • 定年退職制度は年齢基準の雇用制度の象徴であるから、年齢を基準としない仕組みをつくることは、本来仕事に関係ないはずの個人的属性を基準としない雇用社会を作る一般原則のためにも重要
  • 長期収支バランスの年功体系は外国人や女性にとっても問題となる。長期勤続になじまないライフイベント等をもっているから
  • 定年なしの雇用制度は無条件の雇用を意味しない。むしろ整理解雇もありうる
  • 高齢化をもたらす個人の長寿化と少子化は、どちらも経済発展による所得の上昇によって生じる現象
  • 定年から逆算で考える人生設計は単線型の人生背系になりやすい。その路線が途中で消えてしまえば、人生設計は根底から崩れてしまう
  • プロフェッショナルは、自分の職業キャリアをいつ終わらせるかを、外圧でなく、自分の判断で行える人ないといけない
  • プロフェッショナルというのは、自分の生きた証として仕事上の評価を強く希求する人たち
  • 本書で主張した定年破壊によって、引退の決定が個人の手に取り戻される。それは人間にとって極めて大切な職業人生を個人の手に取り戻すために不可欠

以上

| ビジネス書(組織・人事) | 14:32 | comments(0) |
シニア人材マネジメントの教科書 ―老年学による新アプローチ / 山 みゆき (著), 長田 久雄 (監修)

■概要(Amazonより引用)

老年学は年齢を重ねることで、人はどのように変化するかを、心理、教育、経済、労働、医学など各分野から学際的に研究する学問。本書は、その研究成果を企業の人事現場に応用し、これまで知られていなかった画期的なノウハウを提供します。

 

■所感

本書の内容は、人事部門向けというより事業部門のミドルマネージャー向け、対組織というより対個人へのアプローチ、ホワイトカラーというよりブルーカラー寄りの労働者を対象にしている感があり、手に取る際は注意しなければならない。

自分は、会社としてシニア世代を生かしていくための人事制度やキャリア開発といった観点での話を読めるのかと思ったのだが、実際には現状のシニア世代の社員に対するコミュニケーションの仕方や配慮、果てには「なぜ高齢者の指がタブレットに反応しないのか」「高齢者のお辞儀の仕方」まで、かなりミクロな話が書かれていた。

 

さて、その認識違いはさておき、これって「シニア人材のマネジメント」なのだろうか?という疑問を拭えなかった。現在のシニア人材の本質的な課題は、本書に詳述されている身体的な衰えよりも、それを補うはずの「専門的知見」や「モチベーション」を発揮できていないことにあるんじゃないかと。つまり、「使にいくいシニア人材をどう使うか」ではなく、どうやって「使いにくいシニア人材を生まないか、あるいはそういう人材が早めに互いに納得する形で退出してもらえるか(そしてフィットする転出先に行けるか)」こそが本質的な課題じゃないのかと。

言葉は悪いが、本書はシニア世代の「ジジイ的な側面」を強調するばかりであり、自分がシニアだったらやや胸糞悪く感じるだろう。そもそも表紙の穏やかな老人の挿絵自体が物凄くステレオタイプなシニア像を強調している感もあり、あまり読後感のよろしくない一冊であった。

 

■メモ

  • 流動性能力(新しい物事を学習したり覚えたりする能力)は落ちるが、結晶性能力(一般的知識や判断力、理解力)は落ちない
  • タッピングテンポや動作速度の差は大きくない
  • モスではアルバイト募集の年齢制限を撤廃したところ応募が増えた。モスのゆったりした、丁寧さを求める仕事の進め方がシニア世代にも合っていた

 

以上


| ビジネス書(組織・人事) | 14:28 | comments(0) |
組織設計概論ー戦略的組織制度の理論と実際 / 波頭亮

■概要(Amazonより引用)

フラット型組織、カンパニー制のあり方からERP、EVAの活用法まで、企業の戦略的アクションを実現するための、組織制度の設計・導入の勘所を明快に解説。

 

■所感

前記事で引用したので紹介したい。

本書は言わずと知れた組織設計の名著であるが、改めて読むと〕論の見通しの良さ、現在話題のTeal組織に通じるような先見性を感じることができる。特に本書がオススメできる点は、単純な組織の形と機能に関する理論を語るだけでなく、組織を構成する個人のスキル・やリーダーシップ、心理面からの考察や方法論までをセットにして、実践的な解説をしていくれていることにある。よって、この本だけで組織は作れないが、この本の知識なしで組織設計を語ることは難しいだろう。

「組織とは」から解説してくれているだけに、初めて組織設計/再編などに関わる人にとって、組織という大きすぎるテーマを読み解く第一歩にきっとなるはず。

 

■メモ

  • 組織とは、「複数の組織構成員の有機的協働によって、より効率的に共通の組織目標を達成することを通じて、各組織構成員の得る個別効用を極大化させるための集団」
  • 組織変革の目的は、「組織構成員の行動を変革すること」。変革後の行動について具体的なイメージが必要
  • 上記の組織の定義は、最終目標を個人の個別効用の極大化に置いている。組織を構成する「人間」の本質をじっくり見据えてみると、組織への帰属とその組織内での活動の主体はあくまでも自律性とエゴを持つ個人である。組織で働くことにより、獲得したいのはまず個人の効用と捉えた方が、集団主義的、全体主義的組織論が限界を迎えつつある今日では、より妥当と考えられる。企業の成功の延長線上に個人の充足があるからこそ、人間はその企業に帰属するのである。
  • 組織を規定するとは、組織成員の活動のパターンと範囲を限定、固定化すること。柔軟な組織を求めるということは、これまでの固定的な組織で得られていた効率的な業務遂行という大きなメリットを失ってしまうことに留意する必要がある。どのくらい柔軟な組織にするのか、裏を返せばどのくらい固定化するのかを規定するのが、すなわち組織を設計するということである。
  • 戦略とは、競合優位性を活用して、定められた目的を達成しうる整合的な施策群の集まり。(必要・十分要件はP21に記載)
  • 組織の風土とは、その組織の行動様式に大きな影響を与えるものだが、直接的にデザインできるものではない。3S(Structure、System、Staffing)の設計を通じて望ましい風土の実現を図っていくもの
  • 組織設計の3つの合理性。\鑪合理性、∩反ノ冤合理性、6般各胆合理性(P37)
  • 組織の変革の導入に伴う一時的な組織能力や業務効率のダウンをある程度需要しない限り、新組織としての本来の狙いを実現するには至らない。注意しなければならないのは、こうした発想を持たず組織の運営効率にばかり目を向けてしまい、従来のやり方の方がスムーズで効率的という判断がなされてしまうこと。組織改革はあくまで実現すべき行動様式の達成度を判断基準として評価しなければならない。やりにくい、やりやすいという声に押し流されないことが重要
  • PJチームのミッションと権限を明確に規定し、企業全体に示しておくことが重要
  • 組織の課題抽出にあたっては、「組織機能」と「運営機能」の2つの観点からチェックする必要がある。組織機能とは、企画→意思決定→調整→実行→評価の5機能。運営機能とは、責任・資源・報酬・権限の4要件
  • 組織風土の6つの切り口 −〇業の展開スタイル、∋餮伺枴バランス、6叛喇床繊人事評価の特徴、こ杏瑤らの企業イメージ、ゼ勸間の意識、Π媚弖萃螢僖拭璽
  • 組織の基本理念の設定は、組織課題の積み上げで行われれるものでなく、漂っている雲の中心に手を突っ込んで、エッセンスをすくい取ってくるような微妙なニュアンス
  • 意思決定権と区別される実行権の主たるものは、業務範囲に関連するものが多い。例えば情報収集の権限や外注範囲の権限など
  • 組織を改編するときにありがちなのが人数だけを決めてしまうパターン。本当は組織ユニットのミッションごとに人数と人材要件が適切かを慎重に検討する必要がある
  • 人材のデザインにおいては、ピークではなくボトムに近いレベルで必要な人員をそろえることが重要
  • 現在求められる組織の要件、^媚弖萃蠅離好圈璽疋▲奪廖↓▲侫譽シビリティの向上、スペシャリティの強化・創出
  • ネットワーク型組織の課題、/祐屬稜塾呂里个蕕弔、⊃祐屬梁仆茱好僖鵑慮続Α↓コーディネートコスト
  • ネットワーク型組織の前提、30名以下の規模、▲瓮鵐弌爾ある共通のバックグラウンドを有していること、メンバー選定において能力レベルの統一が可能
  • 現在起こっている組織制度上の大変化を推進しているモメンタムはITという非ヒト的なものである。筆者が抱いた問題意識はこの流れの反作用にある。つまり非ヒト的なシステムが整えば整うほど、組織の能力は人的なものにとって決定付けられ格差が形成されるようになるであろうという命題である

 

以上

| ビジネス書(組織・人事) | 19:49 | comments(0) |
THE TEAM 5つの法則 / 麻野 耕司
評価:
麻野 耕司
幻冬舎
¥ 1,620
(2019-04-03)
コメント:THE TEAM 5つの法則 / 麻野 耕司

■概要(Amazonより引用)

●偉大なチームに必要なのは「リーダー」ではなく『法則』だ

「個」の重要性が叫ばれている今。そこからさらなる成長・脱却を遂げるためには、個と個をつなぐ「チームワーク」が重要だ。 

しかし、私たちは正しいチームづくりを教わったことがあっただろうか――。 

本書は経営コンサルタントとして数多くの組織変革に関わってきた著者が、Aim(目標設定)、Boarding(人員選定)、Communication(意思疎通)、Decision(意思決定)、Engagement(共感創造)という 5つの法則をもとに、成功するチームとはなにかを科学的に解明した、チームづくりの決定版だ! 

「『THE TEAM』というタイトルには、チームの法則の決定版を届けたいという思いと共に、読んでいただいたすべての読者の方が「あなたのチーム」をつくれますようにという願いを込めました。 今こそ「チームの法則」によって、ドラマや映画の中では当たり前のように起こる「チームの軌跡」を自らのチームで起こせるようになることを祈っています。 」
(本文「はじめに」より) 

●各界から絶賛の声

「この本を読めば、私たちがいかにチームを知らないかがわかる。 
『チームの法則』を知れば、それだけで突き抜けた場所に行ける」 
(山田進太郎 : メルカリ会長兼CEO)

「自分のチームづくりがいかに整理されていなかったか、情けなくなった。 
もっと早くこの本に出会えていたら」
(岡田武史 : 元サッカー日本代表監督・FC今治オーナー) 

「この本は、チームに関する知の結晶だ。 
この一冊に何冊もの学術書の知見が詰まっている」
(中原淳 : 立教大学経営学部教授) 
 

 

■所感(本書について)

>「自分のチームづくりがいかに整理されていなかったか、情けなくなった。 
>もっと早くこの本に出会えていたら」
>(岡田武史 : 元サッカー日本代表監督・FC今治オーナー) 

 

岡田、ほんとに読んだか?笑

最近だと『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』にもコメントを寄せているが、らしくなく大袈裟なコメントで本人が書いたのか非常に怪しい。

 

まあそれはともかく、NewsPicks Booksの書籍を読むのは『モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書』以来2冊目。二冊とも割と似たような内容の印象を持った。『モチベーション革命』は個人の能力開発、本書は組織の能力開発というテーマの違いはあれど、大学生や新入社員あたりの若者に向けて「会社と個人の関係を変えていく必要がある」と訴える意図は同じように思える。全体的に自己啓発的である。

さらに言えば、やたらと文字が大きく読み進めやすい点や、近年の出版にもかかわらずAmazonでの評価者数が前者333・後者63と妙に多いのも似通っている。

 

さて、所感だが、『モチベーション革命』同様に良くも悪くも”軽い”本である。簡素な内容ゆえに手軽に簡潔に読める。

”チーム”の法則を5つの観点から捉える試みだが、その整理自体はわかりやすく、個々のフレームワークも理解しやすい。この分野を初めて読む人にとっては、理解のとっかかりにはなるだろう。

 

一方で、”チームを科学する”というキャッチコピーの割には、挙げられるフレームワーク自体の科学的根拠に説得力を感じない。巻末に産業心理学等の学術理論の簡潔な紹介がついており、本書の理論はそれらをベースにしたということらしいが、それらの理論からフレームワークが生まれる過程や関係性に関する記述は乏しい。このあたり、”科学”を自称するには、説明が不足していると思う。

 

とはいえ、著者は組織人事コンサルタントである。アカデミズムを突き詰めるのは学者の仕事であり、ある程度主観と経験に基づいた理論になることはやむを得ないともいえる。むしろ、理論の客観性はどうあれ、泥臭く地道な現場対応の中で得られるであろう実践の水平展開にこそ、コンサルタントが本を出す価値はある。なぜなら数か月単位の短期間で実際の企業に対しトライ&エラーを様々な業界で行っている強みがあるからだ。

 

ところがである、この本には著者が普段現場で行っているはずのコンサルティングの実例がほぼ載っていない。逆に根拠事例として載っているのはサッカー日本代表やバレーボール代表、AKB、何より最も紙面を割く事例は自社(リンクアンドモチベーション社)である。さすがにあまりにも特殊すぎる。これでは結局読者における取り組みの参考にはならない。

自社の事例についても、コンサルファームというのは”成長”と”付加価値提供”の価値基準が構成員に徹底的に浸透している稀有な組織なわけで、ハナからモチベーションが高く、組織開発の容易さは事業会社のそれとは比べ物にならない。

上記を補うためにアカデミズムに寄せようとした結果が、恐らく上記の”チームを科学する”というコピーであったり、オマケ程度でついている巻末のサマリーなのだろう。だが、学術を持ち出すに割には自論との関係性は明確になっておらず、学術を利用した権威付けに留まっていると言わざるを得ない。

 

そもそもなぜコンサルにもかかわらず現場事例が一つも出てこないのか。

完全な推測だが、本当の意味で組織変革(いわゆるチェンジマネジメント)の成果を出せたことがないのではないかと思う。これはリンク&モチベーション社に留まらない、組織・人事コンサルティングファームに共通する問題だが、組織・人事単独で組織を変えるのは非常に困難なのだ。なぜなら、組織変革とは常に事業そして経営のビジョン・ミッション・バリュー・戦略・計画・オペレーションと密接に結びつくからである。少なくとも事業戦略領域へのテコ入れ抜きで本質的な組織変革を行うことは不可能に近い。

一方で、基本的に組織・人事コンサルは当該領域へはタッチできない。タッチできるのは頑張っても組織設計であり、基本は人事制度・要員計画・人材マネジメントといった領域までである。ゆえに最終的な改善施策が限定的なものになることに加え、結果としてのKPI・KGIも非常に置きにくく、定性的な成果(の可能性)を抽象的に置くことで終わるケースも多い。驚くことに成果の振り返りをしない、あるいはさせてもらいないことすら普通にある。よって、組織開発の領域において成果の確認やその因果関係を明確にできていないことは非常に多いのだ(無論、だから成果を明確にする必要はない、ということではない)。

 

理由はもう一つ存在するかもしれない。以前紹介した『職場の問題地図 ~「で、どこから変える?」残業だらけ・休めない働き方』のように、原因の網羅的な抽出はできても、具体的な施策の検討に入るほど尻すぼみになっていき、提案の質が一般論化しつまらないものになっているのではないか。まさしく残念な”コンサルあるある”だが、これもありがちである。意地悪な言い方をすれば、組織開発において、本に書けるほどのオリジナルな施策とその成果を出せていないのではないかと。

 

 

■所感(NewsPicksについて)

ところで、ここまで厳しいことを書いてきたが、一方で本書も含めこの出版元の本には多くの読者がいて、そして高評価が多くついているのも事実である(上記2冊はAmazonでは星4つ以上の評価である)。事実、自分の知人にもNewsPicksのサイト・書籍に対する熱狂的なファンがいる。彼らと自分の感想の違いはどこに起因しているのだろうか。

恐らくこの評価の違いの前提になっているのは、”NewsPicksなるもの”に対する抵抗感の違いがあるのかもしれない。自分は同メディアにしても、本書にしても、その一部からじわりと感じる自己顕示欲やそれをベースにした極端な前向きさ(いわゆるエモさとも言うかもしれない)が正直苦手である。情熱を炎で例えるなら、自分にとってそれは心の内側で青く燃やしておくものであって、他人に見せつけるように外側で赤く燃やしているのは端から見れば火事であり、あまり近づきたくない。

 

そもそもNewsPicksは自己顕示欲の高さがドライバーとなって盛り上がっているサイトだと自分は思っている。そこから生まれる書籍は当然ながら話題性重視で最先端な印象を受けるタイトル・売り文句を使い、熱しやすく冷めやすいソーシャルネットワークを活用したPRが行われることになる。また、WEB上で少ないエッセンスを惜しみなく出してから出版する手法も特徴と言えるだろう。

これらの手法の良いところは出版元・著者・読者のいずれもが経済的にも工数的にもローコストで済むということにある。”メディアの革命”というミッションに向けて先進性をどんどん打ち出していきたいNewsPicks、ライトな検討量・文章量で発行を重ねることでメディア露出を増やしたい著者、自分が”特別”で””最先端”なビジネスの知見を得ているという”実感”をライトに得たいいわゆる”意識高い系”、彼らにとってまさにWin-Win-Winの手法であり、そのビジネスは見事というほかない。

 

しかしその一時的な合理性を突き詰めた、敷居を下げることに注力したビジネスにおいて、この先に有意義なコンテンツは生まれていくのだろうか。音楽業界やテレビ業界に起こるコンテンツの画一化ではないが、現在は高評価をつけている読者も、だんだんとそのセンセーショナルなPRの裏側にある本質的な浅さに気付き始め、はっきり言えばこの”流行”に飽きてしまう可能性もあるのではないか。

もちろんNewsPicks Booksはこの2冊だけではないし、例えば学術畑の落合陽一氏の著書などはさすがに一味違うものがあるのかもしれない。しかしどうも当該サイト・出版元の話題性に対して、心理的な遠い距離を感じてしまう次第である。

 

 

■メモ

  • 目標には行動目標、成果目標、意義目標が存在する
  • 組織は環境の変化の度合い×人材の連携度合いでの分類が可能
  • モチベーショングラフで他者の理解が進む
  • エンゲージメントのドライバー Philosophy Profession People Plivilege
  • 当時者意識を上げる要素 /与堯´∪嫻ぁ´参画感
  • 自社ではリピート率を評価指標として採用。またモチベ―ションリエンジニアリング(4半期に1回リエンジニアリングセッション)を実施し、メンバーのPhilosophyを上げている

 

以上

| ビジネス書(組織・人事) | 11:18 | comments(0) |
仕事の問題地図 ~「で、どこから変える?」進捗しない、ムリ・ムダだらけの働き方 / 沢渡あまね

■概要(Amazonより引用)

シリーズ12万部突破! 今日からつかえる働き方改革のバイブル

「やることが多くて、そもそも最初から終わる気がしない」
「頼んだ仕事の進捗がまったくわからない」
「なんで自分がこんな仕事をしなくちゃいけないのか、さっぱりわからない」
「『他人の力を借りたら負け』だと思ってる」
「やり方を変えようとしても、他部署が抵抗してくる」
「問題があっても、空気を乱す発言はしない」
「同じ失敗を何度も何度も繰り返す」

そんな仕事のムダ、ムダな仕事はなぜ生まれる?
問題の原因を図解で示しつつ、解決策を教えます。

■所感

前記事『職場の問題地図』に関する所感と同じになってしまうが、本書も原因を網羅的に挙げているだけに終わっている。

正直原因をブレスト的に網羅的に挙げていくだけなら、その作業自体はそんなに難しくない。むしろ常に検討を困難にさせる要因は、数多ある原因のうちのどれが改善のドライバーになるのかが非常に見えにくいことにある。本書はそこに対する示唆はない。

著者はコンサル業も行っているようだが、コンサルからこれだけ網羅的な課題を挙げられ「見ての通り原因は色々あります。どれが重要な原因か皆さんで考えてみましょう」なんてことを仮に言われた日には閉口してしまうだろう。問題解決においてコンサルに期待したいのは、要因そのものの洗い出しよりも解決すべき要因を決めるための判断軸を出すことだと自分は思う。その意味でやはり本書はその点に応えられていないと考える。

 

■メモ

  • 要因 −〇纏の進め方の問題(計画をたてられない、進捗が見えない)、個人のスキル(期限に終えられない)、0媼韻箋せちの問題(一体感がない、モチベーションが低い)、た場環境や雰囲気の問題(誰も意見を言わない)、ッ亮韻量簑蝓覆笋衒を知らない、有識者がいない)、人間関係の問題(抵抗する人、邪魔する人が多い)、Я反ド土の問題(失敗から学ばない)
  • モチベーションが低い←役割・責任が不明→仕事に対する意識がバラバラ←目的が共有されていない ⇒ 一体感のなさ
  • チーム形成の4つのフェーズ 縦軸:チームの結束・仕事の効率、横軸:チームのパフォーマンス、フェーズ〃狙期、∈乱期、E一期、さ’輯

 

以上

| ビジネス書(組織・人事) | 21:14 | comments(0) |
職場の問題地図 ~「で、どこから変える?」残業だらけ・休めない働き方 / 沢渡あまね

■概要(Amazonより引用)

シリーズ12万部突破! 働き方改革のバイブル
「“残業するな"と上司がうるさいので、帰ったことにして家で仕事している」
「残業はすべて管理職が肩代わり、管理職はいつもゲッソリ……」
「他人に構う余裕がなく、会話がなくなった」
「裁量労働制……お金にならない残業が増えただけ」

そんな職場の“あるある"な問題は、なぜ起こるのか? 原因と全体像を図解しながら、解決策を教えます。

 

■所感

キャッチーさは買いたい。つい手に取りたくような一冊ではある。

ただし中身は、網羅的に働き方の問題の原因(と著者が思うもの)を挙げてそれを線でつなげただけであり、要因の洗い出しの一助にはなるが、その中の本質的な課題や優先課題は何かを突き止める方法は挙げられていない。恐らく読者が本当に知りたいのはそこだろう。例えば「仕事の必要性に対する意識」と「労働時間」で4象限にでも分けて、組織をプロットしたうえで優先順位分けし、その象限ごとに個別の施策を検討するようなやり方なんかもあるはず。そこに対する言及なしに「解決策を教えます」とはいかがなものか。

ちなみに一足飛びに解決策に触れている部分もあるが、はっきり言って一般論の域を出ない(外部研修に行くとか)。ゆえに読後に残るものがかなり少なく、実務で使えるかはかなり疑問。

 

■メモ

  • 5つの要素で仕事をとらえる −〔榲、▲ぅ鵐廛奪函↓成果物、ご愀玄圈↓ジ率
  • 人はなぜ「脱属人化」「マニュアル化」を嫌がるのか −〃覯名鞠欲求、行動(プロセス)承認欲求、B減濔鞠欲求

 

以上

 

 

| ビジネス書(組織・人事) | 22:52 | comments(0) |
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