murasaki

記憶の記録。あるいは独白。
クリープ・ショー / Creepy Nuts
評価:
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Sony Music Entertainment(Japan)Inc.
¥ 2,100
(2018-04-11)

Creepy Nutsの初のフルアルバムであり、メジャーデビュー後初のアルバムでもある今作。

「今までの自分たちを完璧に出し切る作品にしよう」というコンセプトもあって、曲のテーマの多くが従来繰り返し歌われてきた自虐的なセルフボースティングとなっている。また、サウンド面でも前作「助演男優賞」に近いロックやミクスチャーに近い音が使われている。

 

さて、今作を聴いて浮かぶのは、飽食の二文字。

リリックにしろ、サウンドにしろ、サビの歌にしろ、過去のミニアルバム2枚の繰り返しのように聴こえてしまう。

ほぼ同時期にインディーズベストが発売されたにも関わらず、過去の音源3曲(REMIX含む)が収録されていることもよりその思いを強くしている。

 

強いて言えばラストの「スポットライト」は、新機軸を披露しているようにも聴こえる。(以下、リリックを抜粋)

 

使えない奴らトレンチコートマフィア たりないふたりか?所詮脇役か?

次用意したのはどんな言い訳だ? 転ばぬ先に保険かけましたか? 

もうやめようや、もう胸張ろうや ほかの誰でもねぇ俺に言ってんだ。

身の程知らずと笑われようが I'm a No.1 Player 元ベンチウォーマー

 

まさに上記の自分のような声に対して、同じアルバムの中で先手を打ってきているわけで、その直接的な表現に多少驚きもする。

とはいえ過去を振り返れば、バトルが下火になり始めたことを逆手に取って先に予言した「未来予想図」、

メジャーデビューで「変わった」と言われる声を逆手にとった「メジャーデビュ―指南」等、

常に「オレたちはそう言われることもわかってるぜ」と言わんばかりに先手(R-指定の言葉を借りれば「予防線」)を打ってきているわけで、

その意味ではこの一手すら食傷気味に感じてしまう。

結果として記念すべきこの1stフルアルバムは、非常に退屈な時間として終わってしまった。

 

光明を挙げるならば次の「先手」が読めないことだろう。

R-指定の客演作品であるDJ KRUSHの「若輩」やI-DeAの「俺の使い道」など、いわゆるタイトなHIPHOPらしいビートにR-指定を乗せれば、普通に万人が認めるカッコいい作品に仕上がると思う。

一方で、天邪鬼な彼らがそんな安易な方向転換もしなさそうな気もする。

よって、次回どんな手を打ってくるのかは非常に楽しみである。

 

 

ちなみにこのアルバムとは関係ないが、昨年恵比寿で行われた彼らのワンマンライブを観に行ったとき、

会場を埋め尽くす10代後半・20代前半の若者とそこから飛ぶ黄色い声援に強烈な違和感を持った。

あちらこちらでイジりではなくガチの「カッコイイ〜」という女性の声が上がる、

思わせぶりなDJ松永からの「重大発表」の際には、彼の恋愛(または童貞喪失)と勘違いしたらしき女性ファンから悲鳴が上がるなど、

なんかアイドルみたいだなと。

そして、こういう状況って、彼らが妬みつつ馬鹿にしていた最たるものなんじゃないかと。

そういう意味でも今の状況や、もっと言えばこのアルバム自体が彼らの本意なのか疑問に感じることもあり、

だからこそ次回の一手に期待したいのである。

 

以上

 

| 音楽(HIPHOP) | 22:20 | comments(0) |
MCバトル観戦記(KING OF KINGS GRAND CHAMPIONSHIP FINAL 2016 )

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

せっかく東日本予選から見てきた大会なので、記憶を書き残しておこうと思う。

試合内容等の詳細はabemaTVでも流れていたくらいなのでここでは省略。各MCの印象と所感だけ。

 

■ACE

1回戦 VS ERONE 勝利

2回戦 VS SURRY 勝利

準決勝 VS GADORO 敗北

 

良くも悪くもいつものACEだった。まくしたてるような早口のフロウと韻の安定感は、素人にも上手さがわかりやすく伝わる。そこに、多少意味のつながりは薄くとも迫力(いわゆるヴァイブス)が乗っかってくるので、観客としても声を上げたくなる。

一方で、準決勝のGADORO戦での客からの支持の少なさには、このスタイルへの飽きを感じずにはいられなかった。ダンジョンのT-Pablow戦での負け方が影を落としている感じがする。ライムの数もフロウもヴァイブスでも相手を上回りながら、内容の薄さの1点のみで大敗を喫したあの試合によって、信頼が揺らいでいるように思う。

また、安定感はあるが予想を超えてこない、すなわち格下にはほとんど負けないが格上にはほとんど負ける、いつものACEらしい立ち位置での去り方でもあった。

 

 

■ERONE

1回戦 VS ACE 敗北

 

登場時のBGM「一網打尽」の瞬間が大会通じて一番盛り上がったかも。

毎週のように大会に出ているような現役のフリースタイラーと比べるとテクニック的にはどうしても弱くなるし、典型的な現代のフリースラタイラーともいえるACEが相手では分が悪かった。

ただし、バトルの外でも結果を残している故の強力なプロップスは大きな武器であるため、予選時のような「ヴァイブス」からの「お前の彼女 どうせクソブス」といった笑えるラインが一度でも決まれば結果は変わったかも。

 

 

■ISSUGI

1回戦 VS SURRY 敗北

 

ISSUGIの勝敗は本人の問題というより会場によってくるのかなと。

予選では渋谷22時開始ということで、それこそHIPHOP IQの高いお客さんが多く、高い評価を受けたMONJUの「BLACK DE.EP」等を聴いてきた人も多かったと思う。実際、画面を通してみている限り、試合前からかなりの人気を感じた。

その予選と同じメッセージ、同じスタンスで戦った今大会のお客の反応は薄かった。逆にISSUGIに負けたT-Pablowなら、その人気だけで1回戦くらいは突破していたかも。

 

■SURRY

1回戦 VS ISSUGI 勝利

2回戦 VS ACE 敗北

 

印象としては一番薄いかもしれない。そもそも6人のプレーオフの4位で出場することへの違和感もすごい。

ラップの安定感は相変わらずいいのだが、ラッパーとしての魅力にそれ以上のものがない。バトル界の中堅という印象そのままで終わった。

 

 

■GADORO 

1回戦 VS CIMA 勝利

2回戦 VS 裂固 勝利

準決勝 VS ACE 勝利

決勝 VS 輪入道 勝利(優勝)

 

納得の優勝。特に決勝ではテクニックと熱さが共存していて、どんどん強くなっていることを感じさせられた。

また、最初から最後までものすごい人気を感じた。戦極MCバトルを勝ち抜いたこともあるのだろうが、地方から地道に積み上げてきたプロップスの大きさを強く感じた。

悔やまれるのはCIMA戦。マスタベーションのようなトラックとDJの凡ミスで試合が壊れてしまった。まともな試合ならかなりおもしろかったはず。

 

 

■CIMA

1回戦 VS GADORO 敗北

 

無念の敗退。上記のミスと更に判定ミスまで重なる踏んだり蹴ったり状態で大会を後にした。

そのへんのヤンキーっぽい見た目とは裏腹な、侍のようなB-BOYスタンスと2小節ごとに強烈なライムを落としてくるスキルの高さが個人的に好きだったが、ほとんど何もできないまま終わった。残念。

 

 

■裂固

1回戦 VS サイプレス上野 勝利

2回戦 VS GADORO 敗北

 

踏みまくり。正直、字幕がないと文章の意味のつながりは全く理解できないのだけど、それでも聴いていて気持ちいいの確か。

ここに意味のつながりや熱さが乗っかってくれば、もうそのときは裂固の時代だろうなと。まあ堅い韻で意味をつなげるというのが一番難しいのだけれど。

 

 

■サイプレス上野

1回戦 VS 裂固 敗北

 

1回戦は本当に惜しかった。裂固のノリに付き合わず、意味のあるアンサーで全てのDISをうまくあしらっており、会心の出来だった。にも関わらず客判定はドロー、審査員に至っては1本裂固の方が多かったという不思議。少なくとも客判定はどう聴いてもサ上だったような気がするのでマスターの判定には疑問が残った。ちなみに延長戦は、ビートが流れた時点で裂固の勝利を確信した。あれだけ今っぽいビートだとさすがにきつい。

ZEEBRAが言っていた通りダンジョンの戦いよりよっぽど良かった。DOTAMAの不調といい、テレビ番組には違う難しさがあるのか。

 

 

■TAKASE a.k.a HI-KING

1回戦 VS FEIDA-WAN 勝利

2回戦 VS 崇勲 敗北

 

1回戦は寄り切り。崇勲戦は完敗。という感じか。あまり耳に残るパンチラインはなかった。そもそもあまり聴き取りやすくもなかった。もうベテランだが、予選から今大会まで魅力を感じとることはやはりできなかった。

 

 

■FEIDA-WAN

1回戦 VS TAKASE 敗北

 

TAKASEが再三言っていた「岡山の話ばかり」というDISに対して、「むしろ岡山、岡山連呼しているのはお前」というアンサーは素晴らしかった。が、それだけだった、調子いい時はああいうのがもっとでてくるのだろうか。印象薄い。

 

 

■崇勲

1回戦 VS じょう 勝利

2回戦 VS TAKASE 勝利

3回戦 VS 輪入道 敗北

 

安定した戦いぶりだったが、正直言って真面目な話ばかりでつまらなかった。まあ相手が下手にDISをしてこず真正面から戦いを挑んできた結果ではあるが、大きな魅力であるユーモア(R-指定が言うところのボケ)が発揮される場面が少なかった。

輪入道との試合も熱い試合ではあったが、個人的には消化不良。もっと面白いやりとりが観たかった。

 

 

■じょう

1回戦 VS 崇勲 敗北

 

この日のじょうは多くの人が嫌いで仕方がないあのじょうではなかった。真面目に熱く戦っていた。結果、全然強くなかった。

あのどうしようもなく子憎たらしい(でも確かに強い)、客も相手もすべての好感度を無視したあのスタイルで、崇勲とどういう化学反応を見せるか見てみたかった。

 

 

■押忍マン

1回戦 VS 呂布カルマ 敗北

 

1回戦負けだが、かなりの好ゲームだったのでは。

自身のスキンヘッドについて、どちらのユーモアが勝るかという楽しいバトルだった。押忍マンはキャラも立っているし、明らかに好感が持てる体育会系の雰囲気も含めて、バラエティ的に成功していきそうな予感がある。

 

 

■呂布カルマ

1回戦 VS 押忍マン 勝利

2回戦 VS 輪入道 敗北

 

2回戦は消化不良で敗退。まあトラックが悪いわ。なぜこのカードでそのトラックを持ってくるのかという機械的な現代風のトラックで、つまらない試合になってしまった。本当に残念だった。あとは輪入道って確かにディスるところないよなと。

本人が後で言っていた通り、UMBのNAIKA戦同様、仲良くなってディスりにくくなっている感がありありとわかった。

 

 

■輪入道

1回戦 VS LICK-G 勝利

2回戦 VS 呂布カルマ 勝利

準決勝 VS 崇勲 勝利

決勝  VS GADORO 敗北

 

若造を圧倒した1回戦、歴戦の猛者を熱さ・真面目の土俵に引きずり込んで勝ち切った2回戦・準決勝、そして名勝負となった決勝。全てを通して、大会のMVPともいえる見事な戦いぶりだった。勝ってきた相手からして優勝にふさわしい存在だった。

ただ、輪入道とやると相手が真面目になるので、試合としてはつまらない状態にもなっていた。それが輪入道の強さでもあるので悩ましいところではあるのだが、他のMCに対しては、もっと輪入道に対して鋭利なディスをしてもらいたい。

あと輪入道は、ダンジョンのニガリ戦といい、この日のGADORO戦といい、頑張っている年下に対してたまに優しさがでてしまう感じが見受けられるので、そこが唯一の弱点だと思う。

 

 

■LICK-G

1回戦 VS 輪入道 敗北

 

滑りまくって終わった。

まず登場シーンで、ロープに足をかけて登ろうとして足を滑った。そして、相手の先攻1ヴァースでのライム読みがうまく決まらずスベった。あれは観客からしても小節間違いかと思ったので、完全な失敗だった。その結果、終始テンパっていたように見えた。緊張もあったのか。

 

 

■雑感

大会全体としては緊張感のあるそれなりの大会になったが、出場者のレベルに見合った盛り上がりがあったかというと正直そうではなかった。理由は色々あるが、大会後に散々賛否があった通り、いろいろ試合のノイズとなるような出来事があったなと。

以下、前回と比べて良かった点と今後の課題。

 

<良かった点>

・オープニングのDJタイムとVTRがかなりかっこよかった。

・ライブの時間が入らず、進行がスムーズだった。

・審査員の鎮座のコメントが面白かった。

・参加MCの顔触れが豪華で、人数もちょうどいい。

 

<課題>

・リングは微妙。上から垂れるマイクの線が絡まりかけていた。何より、あの狭いリング上に2人のカメラマンがいて、自分周辺の位置からは常にカメラマンが視界を遮っていた。本当に邪魔なことこのうえなかった。あと、お客さん判定のとき、司会のマスターが正面を見ていることが多く、横側の盛り上がりを確認できていなかった感がある。(手の数ではなく声の音量だけで判断しているということであれば問題はないのだが)

 

・再三言われている通り判定ルールがわかりにくい。予選は客判定含め旗が4本だったため、マスターは予選から「ドローの旗を0.5と考えるとわかりやすい」旨の発言をしていた。しかし本戦は6本になるため、それが今回のCIMA対GADORO戦のジャッジミス(ドロー3、GADORO2、CIMA1でGADORO勝利の判定。正しくはドロー)につながった。マスターが真のルールを把握していなかったのは言語道断だが、そもそもこういう勘違いの隙があるルール自体に大きな欠陥がある。

判定を機械的に画面に表示するなど、もっとわかりやすく判定結果を伝える努力が必要。

 

・参加資格も微妙だったなと。最終的にキングじゃない人が半数近くいた。8人の予選や6人のプレーオフなど、意図が見えにくいやり方がいくつかあった。

 

・マスターの進行にも問題があった。旗の青と赤がどちらのMCを対象にしているのか、試合ごとにわかりやすく言うべきだった。また、細かい話になるが、8×4か16×2はMCが言った直後に会場全体に伝えるべきだった。MASTERはいつもどちらかを言わないまま、ビートが始まる直前で「…対…、8×4、Let’s Fight!」というものだから、後方のDJたちは心の準備ができずやり辛かったと思う。観客としてもどちらなのかわからず微妙にソワソワした。 

 

・そもそも8小節か16小節かを選ぶことを句潤が提案したから「句潤ルール」とか言っていたが、UMBでずっとやってきたルールだけに、なんだかなーと。対立していることはわかるけど、わざわざ変な名前つけなくてもいいのに。

 

・DJガッデムの小節間違いは、事前にビートのチェックさえしていれば確実に防げたミス。小節を間違かったうえに、どうしようもなくなって3ヴァースめの後攻に止めるなんて初めて見た。これのみならず、そのへんのリハの詰めの甘さは進行でも感じた。

 

・最大の問題はさんざん言われているビート。問題が多すぎ。

MCが乗り辛いうえに昨年は曲でもほとんど使われないって、一体何のためのオリジナルビートなのか。しかも、無名のDJを起用したうえで、マスターが大げさに次は「・・・ステージ」なんて紹介するものだから本当にサブかった。別に既存でもオリジナルでもいいが、せめてラップの邪魔をしないものを作ってもらいたい。とはいえ、DJも自分の色を出したいわけで、なかなか良いバトルとの共存が難しいシステムだなと。あとギャラもやれよと。

いずれにしても大会が期待レベルに達しなかった一番大きな原因だと思う。前回も感じたが、このシステムさえ変えれば大会の魅力は一気に向上すると思う。

 

 

 

というわけで、課題ばかりが多くなってしまったが、大会のコンセプトはいいだけに、一部の基幹のルール・システムを改善することを求めたい。

今回は、MCは一流ばかりが揃ったし、日本一の大会という権威もなんだかんだ意識として備わってきている。だからこそDJも司会も環境もろもろも一流にしなければならない。

そもそもこの大会にオリジナルなシステムはあまりいらないと思う。ほかの大会の存在を前提にしている大会なのだから、他大会の良いところをまねしながら、最高のMCたちが素直にぶつかりあえるシンプルな環境さえあれば十分だと思う。

次回、頑張ってもらいたい。

 

以上

 

| 音楽(HIPHOP) | 22:12 | comments(0) |
MCバトル観戦記(UMB GRAND CHAMPIONSHIP 2016 ) -後編-

■3回戦・4回戦 −番狂わせはなし−

 

というわけでベスト16。

試合の前にはDJ HONDAによるDJタイムがあったが、疲れているのか興味がないのか、フロアの反応は鈍かった。スマホをいじっている客がかなり多かった。何より30分は長かった。

 

さて、ノーマークの存在から注目の的となりつつあったウジミツはMOL53と当たったが、ここはMOL53が貫録の勝利。決して本調子ではなさそうなMOL53だが、この試合ではウジミツが戦い辛そうだった。ウジミツは呂布カルマの影響を感じるMCで、韻やフローで勝負するタイプには強いのだが、MOL53のような真っ当なことを言うタイプには弱かった。

そのMOL53はベスト8でバンドをやっているというSIVAと勝負。SIVAのラップが滑らかで韻が固く聴いていて気持ちよかったが、記憶に残るラインがなかった。プロップスの差を上回るほどの力量は残念ながらなかった。これでMOL53がベスト4。

 

他方から上がってきていたヤングたかじん(呂布カルマ)は、もはや誰と戦ったのか記憶がない。が、ベスト16もベスト8も危なげなく勝ち上がっていたと思う。「おまえは俺と戦えただけでも得かもしれないが、おれはお前みたいなのに勝ったって何の得もねえんだ」といったラインが笑えた。ここも順当に呂布がベスト4。

 

反対側のゾーン。印象に残っているのはムートンとBASE。延長までもつれる良い勝負をしていた。

ムートンは初めて見た。フリースタイルとは思えないほど滑らかなラップはいい。だが、客の方を向きながら即興性の低い自己紹介型の内容をラップしており、個人的にはあまり好きになれなかった。一方のBASEも相変わらず決め手に欠け、結果はムートンが勝利。

しかしこのゾーンの本命はニガリ。ムートンはベスト8でニガリと戦うことになったが、ニガリはやはり安定して強かった。互いに上手いラップをする以上、アンサーがきちんとあって内容のあるニガリに当然軍配が上がった。ニガリもベスト4進出。

 

最後のゾーンはじょう、句潤、NAIKAでベスト4を争う構図になっており、唯一予想が難しかった。特に今年絶好調のじょうに対して、これまた大会絶好調の句潤がどう戦うかは最初の見物。ベスト16で対決、先攻は句潤。

この試合のポイントは2つあって、1つは後攻1ヴァース目のじょうが8小節を丸々使って、先行の句潤のフローをまねたフローをした場面。非常にらしかったが、これに対して客がそこまで沸かなかった。さらにその次の句潤が、心底呆れた顔で「同じことやって楽しいの?」「ただのモノマネ」と、熱くならず冷静に軽く受け流した。モンスターたちとは違う、適切な対応だったと思う。

もう1つのポイントは、前の試合で「色んな屍を越えてきた」と言っていた句潤に対して、じょうが「おれは葬儀屋。お前と違って本当の屍を越えてきた!」と客を沸かしたのだが、次の句潤が、「はぁ?それがなに。お前はその仕事頑張れば?」と一蹴。一貫してじょうの土俵に乗らなかった句潤が先攻ながら圧巻の勝利。ダンジョンで猛威を振るっていたじょうだが、この試合では優位に立てなかった。あと、やっぱりじょうはダンジョンで嫌われ過ぎたのかもしれない。客の反応が大会通じてやや鈍かった。

 

こうしてJAKE、じょうと優勝候補を立て続けに倒してきた句潤だが、次のベスト8も難関NAIKA MC。

この試合の句潤はやり辛そうだった。知り合いでイジるポイントが少ないのか、ディスがほとんど出ていなかった印象。NAIKAが良かったというより、句潤が良くなかった。そんなわけで激戦のこのゾーンを勝ち抜いたのはNAIKAだった。

 

あと余計なお世話だが、黄猿について。今回は東京代表ということで、若干ながら期待するところもあったのだが、とりあえずもう少し声の音量の調整をお願いしたい。毎度見る度に思うが、そこそこ良いライムやパンチラインがあるのに、ガナリすぎて全然届いていない。しかも毎回そこに成長が見られない。

活舌が悪いのは仕方ないが、せめてもう少し聴こえるようにラップしてくれれば判定しやすいし、音源も聴きたくなると思う。

 

 

■準決勝 −MCニガリの苦悩−

 

準決勝前、CHICO CARLITE、HIDADDY、晋平太のライブはあまり盛り上がらなかった。MCバトルであれだけ沸きながら、ライブでの言葉にはそれほど反応がないことに違和感はあったが、まあやっぱりみんな疲れてたんでしょう。この時点で4時間以上経っていたわけだし。

 

準決勝、まず呂布カルマVSMOL53。大会屈指の好カードであり、結果的にはベストバウトだったかもしれない。お互いリスペクトはしつつ、しっかりバチバチとやり合っており、見た目のことからお互いのシーンでのスタンスまで話は及んでいた。互いに手数がそれほど多くなかった中で、ディスに対してより的確なアンサーをしていた呂布カルマが僅差で勝利。呂布の「お前は下水道でやってろ」というラインが聴いたことのない言い回しでとても良かった。この試合はぜひDVDで見たい。

 

他方はニガリVSNAIKA。後攻一発目から「わかったから、ラップをしろ」と突っ込んだニガリに大きな歓声が上がっていた。NAIKAは優勝したいという気持ちをいつものでかい声でいつもの様に再三熱く熱く訴えていた。

内容的にはニガリの方が手数もあったし、上手いアンサーやラインもあったが、歓声は予想以上にNAIKAに寄っていた。かく言う自分も隣の友人もやはりNAIKAに上げていた。これ色々と理由はあると思うのだが、とりあえず現在のニガリは応援したいと思えないことが大きいのだろうなと。

 

現在のニガリは、高校生ラッパーの肩書がいよいよ遠いものとなり、「挑戦者」のスタンスやそこで築き上げてきた歴戦のストーリーがなくなった。その結果、ラッパーとしてのストーリー性が乏しく、言葉に厚みが出ていない。むしろ、時折漏れてきた上京後の振る舞いや先般のT-Pablowからのディスにより、甲子園球児の美しい(ときに偽りの)さわやかさが剥がれ、ダメ男加減が徐々に露呈されてしまっている。

先般のダンジョンでの、「フリースタイルダンジョン みんなで潜れば怖くない」と言いながらニヤついた場面もよくなかった。ダンジョンで2回の1回戦負けを喫しながら、何事もなかったかのようにチームで出場し、「ガキ」を自称する仲間の威を借りてそう言ってしまう姿勢に、MCとしての信念・筋・こだわりは見えなかった。

もちろん緩さや可愛さはMCの魅力になり得るが、ダサい行動は信頼を失わせる。いよいよイチラッパーとしての信頼が必要になるニガリにとっては尚更そう。つまるところ、今、ニガリが言葉でいくら勝利や優勝を訴えても、そこに本気度が感じられない。

強烈なヴァイブスを武器にしながら、ヴァイブスで勝てなくなっているのが現在のニガリであり、その点でNAIKAの壁は高かった。

 

 

■決勝戦 −NAIKA MCの土俵−

 

決勝はNAIKA MC対ヤングたかじん(呂布カルマ)という決勝らしいカードになった。結果から言うと、延長の末にNAIKAが勝つのだが、僅差ではありながらもNAIKAが若干ではあるが終始押していた印象がある。

 

NAIKAの勝因はいくつかある。まず、NAIKAはもはや準決勝から「優勝したい」という話しかしていないし、絶好調というわけでもないが、会場がNAIKAを応援する空気になっていた。とにかく一言一言に沸いていた。DOTAMAやニガリに対してのリベンジを果たして勝ち上がった結果なのかもしれない。

 

もう一つは、呂布カルマとの相性の良さだろう。NAIKAはとにかく言葉の中身やインパクトで勝負する分、「しゃべっているだけ」「ラップをしていない」というディスはされるものの、言葉の軽さについてディスられることはほとんどない。つまり、呂布カルマが一番ディスりにくいタイプでもある。

また、2人は同年代で仲も結構いいようで、呂布らしくないリスペクトの言葉も出ていた。結果として、「クール対熱さ」という構図の対決を「熱い」会話でやってしまっていた。こうなると完全にNAIKAの土俵になってしまう。

 

NAIKAは大したことは言っていないし、上手い言い回しもない。音楽的にも乗れないラップをしている。それでもその人間性と熱さで客のハートをつかみ、ブレずに泥臭く不器用に続けてきた姿勢が言葉の厚みを生む。そして誰もが応援したくなってしまう。それこそがNAIKAの強さであると改めて感じた。

プロップスの勝利と言えばそれまでだが、結果、終わってみればNAIKA MCの大会だったと思う。

 

NAIKAの優勝が決まった後、呂布カルマが「おめでとう」と声を絞り出し、静かにステージを去った。呂布らしくなかったが、気持ちのいい光景だった。ただ、呂布の背中が初めて切なく見えた。

さらにその後、DOTAMAが泣きながらステージに走ってきて、スト兇離吋鵑離戰戦勝利時のような抱擁をNAIKAと交わしていた。感動的だった。

 

 

■兵どもが夢の跡

 

こうしてUMB2016が終わったわけだが、やはり記憶に残ったのはベテラン勢同士の激闘だったなと。ベスト4以降の互いに全力を発揮しながらの削り合いは熱いものがあって、素直に胸に響くものがあった。UMBらしい真剣勝負の雰囲気がそこには確かにまだ存在した。

しかし再三言っている通り、出場者のレベルが下がった分、有名どころと無名どころの実力差が顕著で、近年にないくらい順当な勝ち上がりになっていた。もし元々出場予定がなかったNAIKAやDOTAMAがいなければ、大会の雰囲気はもっと辛いものになっていただろうし、MOEL53と呂布の出場には大会側も安心したと思う。昨年にも増して下剋上の醍醐味はなくなってきたし、常連の有名勢も目に見えて少なくなっており、やはり大会としては限界を迎えつつあるとも思う。さらに、次回には司会・晋平太もいないし、NAIKAも出ないという。UMB2017は、UMBという看板を掲げた別の大会になっているのではないか。

 

恐らく我々が期待する「UMB」は今年が最後だろう。だからこそ、今大会を観に行くことができて本当によかったと思う。

 

以上

 

 

 

 

 

| 音楽(HIPHOP) | 23:37 | comments(0) |
MCバトル観戦記(UMB GRAND CHAMPIONSHIP 2016 ) -前編-

今年は初めて年末のUMBの全国大会に行ってきた。

 


 

 

■UMBの凋落

UMBという大会は、長らく日本で一番強いバトルMCを決める大会として君臨し続けてきた。

しかしながら、14年のR-指定の3連覇までの盛り上がりをピークに、15年は残念ながら盛り下がりを強く感じさせる大会となった。大きな要因の一つはLibraと9sariの対立の影響で生まれたもう一つのUMB「KING OF KINGS」(以下KOK)の開催。これによって多くのMCは二者択一の参加を迫られ、日本一の大会という名目にケチがついてしまった。

それ以上に内容がよろしくなかった。熱さやエモさといったいわゆるヴァイブスを前面に押し出したChiko Carliteが、本当にそれだけで優勝してしまった。そして大本命のDOTAMAも何故かヴァイブス重視の戦い方を続け、本領を発揮しないままなんとか勝ち上がっていったものの、決勝で盛大に滑ってしまった。結果として、爽快感のない不味い後味が残る大会となってしまった。

 

そして16年。漢 a.k.a GAMI及び周辺のネガティブキャンペーンが更に功を奏し、出場MCのレベル低下が目に見えて各地で起こった。特に顕著だったのは東京予選で、例年本戦に匹敵するほどハイレベルなこの予選において、著名なMCがほとんど集まらない状況が起きた。DDSと黄猿という他大会の上位であまりお目にかからないカードが決勝で実現したのがわかりやすい。

 

ではなぜそんな大会を観に行ったのか。理由は2つあって、1つはなんだかんだで有名なMCたちが参加することになったから。ヤングたかじん(呂布カルマの別名義)、MOL53、NAIKA MC、MCニガリ、ふぁんく、DOTAMA。特に最後の2名はUMB VOTEという人気投票で急遽参加が決まったわけで、ある意味主催側の苦悩が目に浮かぶようだが、結果的にこの人気MCが参加するのは大きかったと思う。

もう1つは、もうまともなUMBを観れるのは今年が最後じゃないかと思ったから。15年大会から出場MCのレベル低下が著しく、司会の晋平太も今年が最後だという。Libraもきな臭い話が絶えない。一方でKOKというか9sariグループはブームに乗って勢力を拡大している。そんなわけで、少なくとも我々が知っているようなUMBとしては最後かもしれない今大会を観に行ったわけだ。

 

 

■1回戦 −順当な勝ち上がりが続く

 

前置きが長くなったが、今年のUMBは新木場のStudio Coastで予定時間約30分遅れの15:30スタート。出場MCは昨年までの32名みから48名に大幅増加。冒頭のライブアクトはTWIGY。サクッと3曲かまして、ラップのキレを感じさせてくれた。

 

その後、晋平太が現れて早速1回戦がスタート。各MCのVTRも短くなるとともに、陪審員が観客と同じタイミングでジャッジを行う流れになったため、延長も少なくなった。これは進行のストレスを減らすことに一役買っていてよかったと思う。

しかし48名である。しかも例年以上に無名のMCの比率が多い。2回戦から出てくるシードも戦績でシードとなっているわけでなく、1回戦と同じようなレベルの試合が続く。このメリハリの無さはつらかった。

このMCたちのレベルだが、当然、どのMCもフリースタイルがうまい。ビートにうまくのせられなかったり、途中でラップが詰まったりということがない。一方でリリックに関しては、「首掻っ切る」「地元をレペゼン」系のよく聞くバトルワードが並ぶ。また、みんなスムースではあるが、見た目にもラップにもひっかかるものがない。オリジナリティが感じられない。

そんな中では、やはりベテランのオリジナリティがどうしても際立つし、観客も彼らを支持していた。無名のMCたちの中で面白かったのは以下くらいだろうか。

 

<ウジミツ(広島代表)>


 

マンガ「闇金ウシジマくん」のウシジマくんを意識した出で立ちでステージ入り。その時点で観客席に若干のざわつきがあったが、いざ始まったラップもウシジマくんのイメージさながら、ドスの利いた声としゃべりに近いスタイルで重めの言葉を吐いていた。特に知名度の劣勢を跳ね返した1回戦SAM戦での、相手の「持って帰る土産話」を受けた「冥土に持って帰るんだろ」や、「MCにとって背中の傷は恥」といった強烈なしっぺ返しは見事だった。呂布カルマ同様、フロー重視のMCとの相性の良さが際立ったし、なによりありきたりなラップが大半を占める大会に対する観客の代弁者として機能していた。確かなオリジナリティがあった。

 

<BUCHI(岡山代表)>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼も数少ないキャラが立ったMCだった。ユーモアや観客を意識したエンタテインメント性が不足しがちな昨今のUMBにあって、観客を笑わせることが割とできていた。ベテラン勢を除けば唯一だったのでは。

「お前は俺のラップがきらい、俺もお前のラップがきらい、ある意味両想い」など、1回戦はイカした言葉を吐いていた。上のウジミツもそうだが、2回戦以降、パンチラインが極端に減っていったのは残念だが、1回戦で楽しめた数少ないMCだった。

 

あとはベテランや中堅勢が順当に勝ち抜く中で、印象に残った試合は1回戦「ふぁんくVS呂布カルマ」。ふぁんくの「うわーやばい、1回戦から言葉の重みおじさんとの対決だー」に会場は大きく沸いたが、最終的には呂布カルマが「大阪に帰れ」と一蹴。とはいえ、自分自身もあのラインには笑ったし、もっとふぁんくは見たかった。

 

 

■2回戦 −見えた大会の趨勢

 

ベストバウトの一つにもなるであろう2回戦「JAKE VS 句潤」も良かった。JAKEは15年大会で旋風を巻き起こした割と新参のMCと記憶しているが、実力的には優勝候補といってもおかしくない。雰囲気や話す内容は違うが、タイプ的にはR-指定と近くて、フローやリリック等、欠陥らしい欠陥がないどころかすべてのレベルが高い。ベテランのような面白さや巧さ、安定感がある。東京や大阪ならともかく、どうやって鳥取からこんなMCが生まれたのか不思議。

試合自体は、大会を通じて調子の良かった句潤のフロウとアンサーが冴える一方、JAKEも2本のうちの1本で確実に強烈なパンチを放っていて甲乙つけがたく、結局再延長までもつれた。最後は後攻の優位性で句潤が勝利を得たが、ややスロースターター気味のJAKEだけに、いきなりの句潤はつらかったと思う。非常にもったいなかったがJAKE敗退。

 

2回戦で当たってしまった「DOTAMA VS NAIKA MC」も延長まで五分五分のナイスゲームだった。ただ、これも結局、2本目で簡単にうまく締められる8小節×2本の後攻の優位性で、NAIKAが寄り切った印象。やっぱ、8×2は欠陥が多すぎる。

 

後の無名同士の試合は正直印象がかなり薄い。試合数も多すぎるし、観客も終盤にはだれていた。一切歓声があがらなかった試合もいくつかあった。

よって、2回戦が終わった時点で、もうベスト4は確定していたように思う。とてもじゃないが、呂布やMOL、ニガリやNAIKAを倒せそうなMCは見当たらなかった。絶好調の句潤が割り込んでくる可能性が若干あるくらいで、それくらい新参とベテラン勢に力の差があった。スキルの標準化は進んでいるが、やはりUMBのレベルは確実に落ちている、そう感じた1・2回戦だった。

 

(続く)

 

 

※DOTAMAの顔写真がちょっと面白かった

| 音楽(HIPHOP) | 03:39 | comments(0) |
KING OF KINGS 東日本予選 at VUENOS TOKYO (2016/10/16)の感想(ベスト8以降)

時間が経ってしまった。ベスト8以降の記録です。

 

■ベスト8

 

<NAIKA MC(先攻) VS GOTIT(後攻)>

いまいち内容も韻も決定打の出ないGOTITに対して、NAIKAは1ヴァースごとにパンチラインを必ず出してくる。

試合の雰囲気はUMBや戦極のときの同カードと違い割とピースな雰囲気。相手を攻撃するよりは、いかにうまい/おもしろいラインを吐くかということに重点が置かれていた。

結果はやはりNAIKAだったわけだが、最後のGOTITの「お互いもう天狗の鼻は伸びてねーな!」はさわやかで気持ちの良いラインだった。

 

<道(先攻) VS 崇勲(後攻)>

今大会の名勝負の一つ。ここ最近の大会及びこの大会の一回戦でも際立った安定感がある道が王者崇勲に真っ向勝負。とにかく韻が固いし、ユーモアもある。何よりラップする姿がかっこよく、正直ディスるところがない。一方で崇勲も堂々と対抗。全く負けていない。

ある意味似たもの同士のこの対決はかなりの僅差で崇勲に軍配。「昨年王者」というプロップスでギリギリ上回った印象だが、延長にすべき試合だったと思う。

 

<MULBE(先攻) VS KAI(後攻)>

恐らく今大会最も地味なカード。MULBEの「おまえは声量がない」というこれ以上ないKAIへのDISが完全に決まり、MULBE勝利。声量の無さについてはその後審査員の漢にも指摘されているわけで、やっぱりみんなそう思ってた!、と激しく同意した次第。

 

<hiero(先攻) VS 押忍マン(後攻)>

実力者同士のこの一戦。かなり拮抗した試合だったような気がするが、押忍マンが何発かのパンチラインで寄り切った。とはいえ、hieroのラップのオーソドックスなカッコよさ、韻の固さは大会通じて印象に残った。

 

 

■ベスト4

 

<崇勲(先攻) VS NAIKA MC(後攻)>

事実上の決勝戦。数少ない勝って先攻を選ぶMCであるNAIKAが、この試合では後攻を選んだ。が、崇勲が「道からもらったコカ・コーラ こんなとこで負けてられっかコラ!」と頭からかましてくる。崇勲、先攻でも強し。

そこから先は相手の揚げ足をとってどれだけ笑えることを言うか、という勝負になっていたが、人気で優勝候補筆頭のこの2人だけに観客も沸きに沸いていた。

個人的には崇勲がやや優勢だった気がしたが、延長が妥当かなという感じ。実際、お客の判定もほぼ互角だった。

だが、MASTERのジャッジはNAIKAに1ポイント。しかししかし、審査員は確か全員崇勲に上げて、まさかの崇勲逆転勝利。

まあ先攻であったことを考えれば確かに崇勲かなという気もする。いずれにしても、今大会のベストバウト。

 

<MULBE(先攻) VS 押忍マン(後攻)>

ベスト4の割に地味なカードになったなという印象。MULBEは確かにダミ声という強烈な特徴があるが、聴き取りづらいうえに内容的にそれほど感じるものがなかった。なので、まあ押忍マンだろうな、試合前はそう思っていた。

しかし押忍マンの調子が出ない。一回戦をピークにパンチラインや強烈なアンサーが出なくなっている印象で、試合は五分五分の様相に。

最後は知名度や人気という点で押忍マンに軍配が上がった印象だが、試合後真っ先に浮かんだのは「崇勲優勝」の4文字。

 

 

■決勝

 

<押忍マン(先攻) VS 崇勲(後攻)>

似たタイプであり、正直、下位互換と上位互換という印象が見た目からも拭えないこの試合。始まる前から押忍マンが勝つイメージを持てなかった。

実際、試合開始時から押忍マンがパンチを出せない。一方崇勲は細かい日本語の揚げ足をとっては、大声で言葉のビンタを繰り出してくる。終始崇勲が押しっぱなし。

結果、客も審査員も100対0で崇勲。押忍マンすら「崇勲、強え!!」。

道、NAIKAとのハイレベルな攻防を勝ち抜いてきたことを考えても崇勲は優勝にふさわしい。言葉の節々からもディフェンディングチャンピオンの風格がにじみ出る。大会で止められる者がいるのか、本当に楽しみだ。

 

光り輝くハゲ
 

 

 

■最後に

大会全体を通して、厳選された実力のあるMCばかりで、UMBや戦極にたまにある興味ゼロのカードというのがほとんどなかった。また、たった1時間半程度で終わるほどのスムーズな進行も素晴らしかった。ダースが言う通り、16人というのはちょうどいい。

試合内容は、良くも悪くもバチバチという感じではなかった。もちろん真剣勝負だが、相手を攻撃するよりも自身がかっこよくラップをし、観客を沸かせる上手い言い回しができるかに力点が置かれていたと思う。それはきっとベテランが多いこと、顔見知りや何度も対戦しているカードが多かったことが理由だろう。

 

思うところがあるとすれば、延長の出にくさか。押忍マンVS松島、道VS崇勲、崇勲VSNAIKAあたりはかなりの僅差であり延長でもう1回見たかった。まあ仕方ない。

なにはともあれ、楽しめる大会だったし、より熱くバチバチした試合が増える本戦への期待が増した。とても待ち遠しい。

 

以上

 

 

 

 

 

 

| 音楽(HIPHOP) | 00:48 | comments(0) |
KING OF KINGS 東日本予選 at VUENOS TOKYO (2016/10/16)の感想(ベスト16まで)

先日、豪華メンバーが集まったKOKの東日本予選を観に行ったので、感想を残しておこうと思う。試合の順番とラップの引用は不正確な部分が多いが悪しからず。

 

■開始前

会場は渋谷のVUENOS。そんなに広くない箱は観客でパンパン。まあこの日の出場MCを見ればそれも納得。崇勲を筆頭にJAG-ME、押忍マン、掌幻、GOTIT、GOLBY、MC松島そしてNAIKA MCと本戦優勝を争うレベルのMCたちが集まった。これ以外も有名なMCばかりで、こんなに締まったメンツの大会はなかなかないと思う。

審査員は漢、DARTHREIDER、KEN THE 390。司会のMASTERのビートボックスからのコール&レスポンス(KOK!)で大会はスタートした。

 

■ベスト16

<NAIKA MC(先攻) VS GOLBY(後攻)>

初戦から優勝候補のベテラン同士がぶつかった。仲良しの2人だけに、相手を攻撃するというよりはいかに面白いラインで会場を沸かせるかという勝負になっていた。ジャンケンに勝って先攻を選ぶNAIKAは初っ端から気合全開という感じで、デカイ声で会場を沸かせまくっていた。声と言い方だけで会場を沸かせてしまうあれはズルいけどさすが。

対するGOLBYは「こいつニット帽とったらコロ助」等、いくつか面白いラインもあり粘り強く応戦していた。良くも悪くもいつものような韻で踏み倒してくるような戦い方ではなく、即興性の高いアンサーを意識していたように思う。

勝者はNAIKA。両者とも同じスタンスでさわやかに戦っていたが、それだけにより沸かせていたNAIKAが勝利したという感じ。開幕戦にふさわしく、会場が沸きに沸いた素晴らしい一戦だった。

 

<DEJI(先攻) VS GOTIT(後攻)>

DEJIのラップは相変わらず悪くない。悪くないのだが、間や声量の大小などペースの変化がないラップに対して観客はどこで沸けばいいのかわからない。わかりやすい沸きどころを設けるのはMCバトルでは必須の技術だし、普通のライブでも必要だと思う。それが決定的に足りない。

一方のGOTIT、こちらも本調子ではなさそうなのだが、相手の「止マッテタマッカ」を用いたラインやいつまで茨城の先輩に頼ってんだというDISに対して、「先輩たちが止まったまんまだからおれは追い越していく」とか「GOCCHIを超えるために来たんだ!」といった強烈なラインが飛び出した。順当にGOTITが勝利。

 

<Y.A.S(先攻) VS 崇勲(後攻)>

崇勲は先日フリースタイルダンジョンでDARTHRAIDERにまさかの敗戦を喫したばかり。だが、仮にY.A.Sが崇勲相手にそれを持ち出したら、崇勲得意の男前な正論で強烈なビンタを食らせられる姿は容易に想像できた。このオッサンはどこまでも正論が似合うMCなのだ。

が、Y.A.Sはそれを持ち出してしまった。そこから先は「これで決まった。おれは勝者、こいつ視聴者」「ダンジョン放送しますかって聞かれたぜ、放送してくださいって言ったぜ」等々で論破。

Y.A.Sのベテランらしからぬアグレッシブな攻め方には好感を持てたが、ここは崇勲が完勝。

 

<道(先攻) VS TENGG(後攻)> ※この試合はなぜか記憶がすごく怪しい

確かこの2人の対戦だった気がするが記憶が薄い。というのも、TENGGのラップが印象に残らなかった。道のTシャツには「BUY COCAINE」。道が先攻1ヴァースからかなり堅く韻を踏むと共にコカインネタのユーモアで終始圧倒していたように思う。TENGGはラップしているときの立ち振る舞いはかっこいいのだけれども強烈なラインを残せなかった。道、圧勝。

 

<JAG-ME(先攻) VS MULBE(後攻)>

両者ともにいつものスタイルで勝負していたのだが、ここまで堅い韻とテンションの高さで各MCが盛り上げていたせいか、JAG-MEのラップに客が沸かない。それに比べるとMULBEはだみ声でわかりやすく客を沸かせていた。また、JAG-MEのアンサー自体も正直弱かった。

JAG-MEは昨年の本戦ファイナリストであり、こんなところで終わってしまうが非常に惜しいのだが、無常にも判定はMULBE。確かKENあたりはドローに入れていたが、それはJAG-MEの本来の強さを知っていたからだろうなと思う。

 

<J平(先攻) VS KAI(後攻)>

J平のラップは真っすぐで聴き取りやすいのだが、この試合に限るとあまり内容がなかった。「おれはライブした全国すべてをレペゼン」と言ったのに対して、KAIに「レベゼンて言葉はそんなに軽くねえ」と一蹴されていた。
とはいえ、KAIも残念ながらいつものKAI。自分の中では広島のアリスや福井のブシダマイクと並ぶ、UMBの典型的な1回戦ボーイという印象が抜けない。理由はやはりラップが弱い。ラップが弱いというのは単純に声が小さい、抑揚がない、そして何より個性がない。

この試合、フリースタイルダンジョンのJ平VSR-指定の後であれば結果が変わったかもしれない。不運にも直前だったことが災いし、KAIの勝利。

 

<掌幻(先攻)VS hiero(後攻) > ※先攻後攻逆かも

優勝候補の一人である掌幻だったが、割と似たタイプのhieroの前に決定打が出ない。逆にhieroはよかった。フロウの安定感、聞き取りやすさ、韻の堅さ、総合的に見てシンプルに「強い」と感じた。かなり僅差の試合であり、延長にすべきと感じたが、KOKの判定システムは観客と審査員の4票のうち、ドロー3票か、ドロー2票+それぞれに1票、という形にならないと延長にならないため、この試合はギリギリhieroが勝った。

掌幻、毎度上手いのだけど、なかなか勝ちきれない。

 

<MC松島(先攻) VS 押忍マン(後攻)>

こちらも一回戦から好カード。MASTERが試合開始時に「レッツジャッジ!」と言い間違えたのを即座に「(ジャッジの)赤!赤!赤!おれ勝利!」と拾ったMC松島はさすが。その後は両者がいかに笑えることを言うかという勝負になり会場は終始笑いに包まれた。松島の「ハゲ!ハゲ!ハゲ!」からの「ハゲバーガー」に対して、「なんでハゲに挟まれるのが前提になってるんだよ!」というツッコミが一番笑いをとっていたので、押忍マンに転んだ印象。とはいえこれも延長にすべき試合。それくらい松島のラップの内容と乗せ方が良かった。

 

というわけでベスト8に勝ち残ったのは、NAIKA、GOTIT、崇勲、道、MULBE、KAI、hiero、押忍マン。

 

続く。

 

 

| 音楽(HIPHOP) | 23:14 | comments(0) |
B BOY PARK 2016 (8/13)の感想

今年は8/12〜14の三日間開催だったB BOY PARK。MCバトルの開催が予定されていた8/13に代々木公園に行ってみた。

 

■一抹の不安

 

以前は唯一のメジャーなMCバトルを開催すると共に、多数の著名なラッパーを無料で楽しめる場として大いに盛り上がっていたB BOY PARK。最盛期は2万もの人が来場していたとか。

しかし近年は他のイベントに押された結果なのか、限られた運営や制約の中で意図的な縮小を図ってきた結果なのか、催しや集客が顕著に縮小していた。昨年に至ってはダンスバトルのみの開催だったらしい。

そんな中でも運営側の告知のスタイルは当初から一貫して最小限。開始時間もイベントスケジュールも出演者もほとんど明かされないホームページ(リンク)のみが唯一の情報源であり、SNS等でそこに積極的な誘導が行われることもない。つまり、B BOY PARKというイベントを知っていて、適切な時期に自分からホームページまで情報をとりに行った意識の高いヘッズのみが開催を知るということ。

更に昨年はライブもバトルもなかったわけで、今年一体何人がこのイベントの開催を認識しているのか、かなりの不安があった。また、過去色々と起きていた運営上の問題にも不安がよぎる…。

 

15時すぎに到着。広場全体の閑散ぶりに面食らう。橋の下で行われていたダンスバトルの周囲には大きな輪ができていたが、それ以外はほとんど何も行われていない状況。メインステージの端っこに並べられた机、イス、DJ用の機材、ステージ前のベンチでまばらに座る人たちの光景がなんだか寂しかった。

そもそも13時開始予定だったMCバトルの予選、その後の本戦の進行状況はどうなっているのだろう。この時には不安が確信に近くなっていた。

そして運営の席に座っている人に聞いたところ「エントリー不足により予選中止。17時頃からサイファーみたいな形でライブをやる」とのこと。不安的中。このバトルブームのご時世に人数不足とは…。

 

ダンスのことはよくわからない ダンスバトルの様子
 

 

■ようやくラッパー登場

 

その後、とりあえず時間を潰し17時頃にステージへ。ステージ前にいるのは30人くらいだろうか。

司会が出てきて以前の思い出話を話す。「2000年のビデオを見直した。あれからもう16年が経った。今回は本当にB BOY PARKの原点に帰ったような感じがする。先祖帰りだね。先祖帰りしすぎて2000年以前みたいな状況になっちゃった」と集客の少なさについての自虐で客席を笑わせていた。

ただ、ラッパーはとりあえずいるみたいで、何よりステージ後方にひょっこり現れた晋平太を見て嬉しさと共にほっとする。一人でも知ってるラッパーを見られるのなら来た価値がある。

 

ただ、実際にその後壇上に上がったのは5〜6人程度。晋平太以外はわからない。

各自から簡単なフリースタイルがあった後、晋平太が各自の自己紹介も兼ねてMCバトルの開催を提案。「ここにラッパーはいねえのか」と出場者を募ると、客席からも8人くらい手が上がり壇上に上がる。8小節×2本。ようやく大会らしくなってきてテンションが上がる。

 

晋平太が司会もトーナメント表の記入も行うテキパキとした進行でスムーズに大会形式が整えられていく。よく見ると出場者に黄猿がいる。知っているラッパーが増え嬉しい。

 

 

原点回帰のB BOY PARK 開始直前の様子。人はまばら。
 

 

■まさかのACE登場

 

一回戦が終盤を迎えた頃に更に4人程度のラッパーたちが壇上に現れる。その中にACEが。かなりテンションが上がる。

ほかにフィメールラッパーのCHARLESもいた。どうやらTwitter上でようやく告知・拡散がなされたらしく、それを見て急遽集まった模様。ちょっと告知すればすぐ集まるのだから、運営側にはもう少し頑張ってもらいたい。

 

ここで参加者が16人を超えたため、新参4人と一回戦の敗者たちによるアカペラの30秒PRを実施。一番歓声の多い人が二回戦の残り1枠に入れるというもの。

会場を上げていたのはゆうま、ACE、バンビ(表記不明)、CHARLESあたりか。ゆうまはラップではなく話し言葉で「今日この会場に一番先に来たのは僕です!」「予選参加者の集合時間に来たのは僕一人!」と会場を笑わせていた。ACEはもはや早口でまくしたてるだけでも大盛り上がり。バンビはラップや立ち振る舞いがやたらと滑らかでシンプルにかっこいい。CHARLESは晋平太の格好を「体育教師みたい」とイジり笑わせていた。

ただ上記に限らず、この日の出場者たちは、ビートにフロウをのせる、韻を踏むという基本のスキルを全員が持ち合わせており、最近のラッパー人口の増加とそれに伴う全体的なスキルの底上げを実感した。フリースタイルをできることが当たり前の時代になったんだなと。

 

結果としては、一番歓声の大きかったACEとバンビでバトルを実施。ACEがエンジン全開という感じではなかったこともあるし、バンビのラップが会場をあげていたこともあり延長戦にもつれる。延長戦でも引き続きバンビの優勢を感じたが、やはりお客さんはせっかくのACEをまだまだ見たいわけで、僅差でACEが二回戦に進むことになった。これでベスト8が揃う。

 

ACEが小走りでにじりよっていく。ちょっと面白かった。 バンビ VS ACE
 

 

 

■よもやのハイレベルな争い

 

ベスト8。ACEは知り合いの伊達メガネ(表記は不明⇒追記:ダテメギリでした。失礼)とバトル。伊達メガネは優勝できなかったらラップを引退するとの決意通り、熱がありながらも聞き取りやすさと内容の面白さでお客を沸かせる。かなりお客の心を掴んでいたが、ACEも力技ともいえる堅いライミングの応酬でなんとか延長に持ち込んでいた。延長戦ではACEがようやくエンジン全開になり韻もパンチラインも決めて伊達メガネを圧倒。ただ、伊達メガネの明るいキャラ、聞き取りやすさ、客の歓声が上がらなかった際に「滑った」とすぐに認める潔さがとても好印象だった。

 

この大会は伊達メガネ以外にも、客を笑わせられるMCが多いのがかなり好印象だった。上記のゆうまもYOUTUBERらしく常に客を楽しませようしていたし、トオル(表記は不明)もオタクッぽいキャラが立っていた。名前は忘れたが、34歳、婚活アピールをしていたラッパーも面白かったし、岡山から来たというラッパーもラップ自体はよく止まるし小節も間違えていたが、「わしは人をディスることが嫌いじゃ」といったパンチラインで何度も客を沸かせていた。

 

というわけで各ラッパーが予想以上に楽しいラップをしていた。最近のバトルは、全体のスキルが底上げされてきていることで、上手くラップするだけでは全く印象に残らなくなっているし、UMBなんかでも顔もラップも思い出せない一回戦MCたちが多数いる。それに比べれば、この日に聴いたラップは非常に個性が光るサービス精神のあるものばかりだった。素直に関心させられた。

 

ちなみにこの頃にはお客さんも100人以上は来ていたと思う。

 

 

■白熱の戦いは最後まで

 

さてベスト4。ここから8小節×4本。ACEの対戦相手は14歳のラッパー(名前忘れ)。ACEに対し「お前みたいな大人の価値観をぶっ壊すためにやってきた」等、幼い顔立ちとおたくっぽい出で立ちながら熱いラップで応戦。韻も固かったし、フローもスムースだった。

が、最後はACEの怒涛のライミングとラスト1小節の締め方の上手さで押し切られた印象。この中学生が後攻ラストの8小節でパンチラインを決められれば番狂わせもあったかもしれない。

 

他方は黄猿とリズム(表記は不明)。沖縄から来たというリズムは見た目のクールさと滑らかなラップがかなりマッチしており好印象。黄猿は、フリースタイルダンジョン同様、どうも発声ががなりすぎていて客をあげきれていない感があり、リズムが途中までは互角の勝負を見せていた。が、ここにきて黄猿がいくつかリズムの言葉や挙動を的確にイジりはじめ客を沸かせることに成功。のけぞりながら上方に向かって言葉を吐いたリズムに対し、「イナバウアーみたい」といじった場面は特に面白かった。勝者黄猿。

 

で、決勝はある意味オッズ通りのACE対黄猿。1本目はDJのビートに変調が多くループ構造がかなりわかりにくかった結果、両方とも小節間違いを連発。客もよくわからなかったし、DJ自身もわからなかったのか、最後までスクラッチで修正できなかった。また、歓声等の様々な音が入るようなトラックだったこともあり、ラップ自体も聞き取りにくかった。

勝者はACEだったが微妙な雰囲気だったので、晋平太が急遽三本勝負に変更。上記の30秒PRといいこのルール変更といい、晋平太のお客さんの期待を読んだ即席の司会ぶりは終始見事だった。

 

延長戦。ACEにとっては4試合で3回目だったが、むしろ延長戦の方が調子を上げている印象で、ここでも客を沸かせていたし笑わせていた。最初から最後まで安定してうまかったし面白かった。特に、相手が沸かせていた後に内容もしくは韻で手堅いアンサーをドヤ顔で返すあのスタイルは、その迫力だけでこちらもなんとなく上がってしまう。

黄猿のパフォーマンスも悪くはなかったが、試合前から最後まで黄猿が勝つイメージを正直あまり持てなかった。やはりプロのラッパーとなりつつあるACEの存在感と堂々とした立ち振る舞いは大会通じて際立っていた。

というわけで最後はACEが大差で勝利。お見事。なにより、よくぞ来てくれた。

 

最後はオープンマイクとDJのMP3演奏で終了。オープンマイクでは更にラッパーが増えていて、髪を後ろで結っていたラッパーのレゲエっぽいフロウがかなりイカしていた。身体の動きもグルービーで、生で観ていてとても気持ちよかった。

 

 

■B BOY PARKならではの面白さ

 

こうしてMCバトルは終了。一時はどうなることかと思ったが、晋平太のスムース且つ気の利いた進行と出演者たちの技量・サービス精神により、かなり満足感のあるイベントとなった。自分の知らない面白いラッパーってそこら中にいるのだなと。

 

UMB2015が典型だけれども、バチバチの緊張感の中でバイブス重視に傾き過ぎた印象があった昨今のバトルシーン。ユーモアや内容の面白さが薄れたラップが多いと感じていたが、こういう賞金もない即席感のあるイベントだからこその面白さが随所にあった。この日のラッパーたちは勝ち負け以上に自分の名前を憶えてもらうことを重視しており、そのMCならではのオリジナルなフレーズが数多く発信されていた。20人程度という規模も盛り上がりを保ち続けるのにベストだったと思う。

 

後はやはりCRAZY-A自身も言っていたが告知でしょう。もう少し集めないともったいないし、それなりに名の知れたイベントなのだから集めようと思えば簡単に集められたはず。

来年は20周年ということなので、盛大にお祝いできるよう、是非ともそのあたりに力を入れてもらいたいと思う。

 

以上

| 音楽(HIPHOP) | 13:53 | comments(0) |
KREVA/心臓
ポニーキャニオン
(2009-09-08)

想像以上の出来。


メロウな曲で固められた前半部の楽曲は、今までのような、雰囲気ばかりのトラックとキレを欠いたラップによる退屈なものでは決してなくなった。トラックは時に変調を織り交ぜながらも根底にHIPHOPらしいビートを感じるものであり、非常に魅力的なものとなっている。また単純にKREVAのメロディライン自体が冴えを増しており、以前のような中途半端なポップさではなく、ある意味振り切った感じがして好印象。
ラップも、より歌に近いフロウにシフトしているのがいい。前作までのラップは、当人にとってはいろいろ狙いはあったにせよ、どうものっぺりとし過ぎていて、音を外した下手なものに聴こえてしまっていたが、今回は十分聴いていられる。

前半部で気に入ったのは「Tonight」。極限まで機材でいじった歌声が妙な切なさを感じさせる。

後半はやはり「ACE」がすごくかっこいい。音の迫力と勢いだけで十分なくらいのトラックに、KREVAがいかにもらしい自信家なリリックを吐き出していくもんだから圧倒される。


ただし、後半がアッパーという割には、実際に彼のラップスキルを誇示するような曲は「ACE」「中盤戦」くらいで、他は前半部ほどではないにしろメロウなものが続く。

そこさえ気にならなければ十分に傑作だろう。

| 音楽(HIPHOP) | 04:01 | comments(0) |
DJ BAKU/THE 12JAPS

期待のしすぎが良い結果をもたらすことがないのは、もう過去の経験からわかりきっていることなのだけど、今回も結局例に漏れず。

まずは、早々にB.I.G JOEが裏切ってくれる。
イントロもなく唐突に始まりだした悪ぶった雰囲気の音。そして、ヴァース前のシャウト的なものがいつまで続くんだと思っていたら、いつのまにか始まっていたB.I.G JOEのラップ。
トラックの音の軽さも然ることながら、ラップがなんと弱々しいことか。
もともと力強い声やフロウを持つラッパーではなかったが、これはひどい。ついでにいうと音にも乗れてない。
もともと世間の評判ほどではないと感じていたMCだが、この曲は本当に酷かった。

で、続く二曲目がこれまた微妙な出来。DJ BAKU×Shing02なんてどんな化学変化が起きるのかと思っていたら、なんだこの凡曲は。ありきたりなロック風のトラックにShing02らしからぬ万人への応援歌。耳を疑った。これがあの深遠な世界観で魅せるShing02なのかと。 
とにかく驚くほどにリリックにヒネリがない。サビに至っては冗談かと思うほど。

この冒頭の二曲でかなりのテンションが失われてしまう。
と思いきや、怪しげなピアノの旋律が始まるインスト及び4曲目「WALKMAN feat. NIPPS,K-BOMB」、これはよかった。暗いトラックと不可解な二人のラップがなかなかの相性を見せていた。

だが、これくらいではテンションは戻らない。依然として警戒体勢のまま、次の曲「スサノオ feat. BRON-K」へ。これも割と悪くなかった。

この曲あたりから、思っていたほど悪くないなと思い始める。実際ここから続く曲たちは、聴くに絶えないなんてことはなかった。ただ、ラッパーたちの基本の技量だけで聴けている感じは否めなかったが。

で、収録曲の短さか気付けば最後の「JAPANESE HIP HOP AND ME feat. Ill-Bostino」に。終わりらしく爽やかなトラックに、ポジティブで力強いBOSSのリリックが映える。例外的にフックの構成も非常に良かった。
ただ、これにも一言物申したい。この曲、今作の直前に発売されたTHA BLUE HERBのシングル「STRAIGHT YEARS」に雰囲気がそっくりなのである。ポジティブなメッセージといい、明るいトラックといい過去のTBHにはなかったタイプの曲だから類似点が非常に目立った。曲の出来がいいだけに非常に残念。

まあそれに、この類のトラックって別にBAKUが作る必要もないと個人的には思う。BAKUとBOSSのタッグに期待されるレベル、すなわち化学反応みたいなもんはまったく起きてない。無難な線を狙いにいったと感じてしまうし、正直置きにいった感が否めない。

正直、DJ BAKUへの失望は隠せない。DJ BAKUとはこんなに顔の見えない音を作るトラックメイカーだっただろうか。BAKUにはこの猛者どもを自分の世界観に取り込んでしまうくらいの姿勢がほしかった。客演陣のキャラや希望、嗜好に合わせてしまったこと、すなわち彼らをアルバムを構成する1ピースとして捉えられなかったところに、このアルバムの色の無さの原因があるんだと思う。BAKUのあの強烈な個性はどこにいってしまったのやら…。残念でならない。

最後にもう一点だけ。ジャケットなのだが、実はこれにも大いに不満。ケースの上にかぶせる紙ジャケの円形に空いた真ん中から見える「12」という字、これ微妙に下方よりのため、隣の「E」と「J」の文字の片鱗が少し見えてしまっている。なんと中途半端な…。
発売前にポスターに書かれたジャケットでは、機材をいじるBAKUの絵が「12」の部分に挿し込まれていた。その絵が怪しげな雰囲気でなかなかかっこよかった。
にも関わらず、なぜそれを改悪して、しかもあんな適当な仕事をしてしまったのか。かなり理解に苦しむ。ちなみに特典のステッカーもやっつけ仕事みたいなしょうもないデザインだったし。重ね重ね残念。
なにかと残念な気持ちにさせられるアルバムだった。


| 音楽(HIPHOP) | 03:47 | comments(0) |
D.L/His Masters Works
デヴラージといえば、客演時のプロデュース・ラップで毎度絶大な存在感を残していくイメージだが、そんな彼の客演ばかりを集めた今作は予想通りの良い出来。

また、単体の曲がそれぞれ良いいのはもちろんだが、アルバムの構成が思いのほか練られている。
例えば時折曲間がミックスでつながれていたり、あえて最後に歌ものを持ってきたりと、寄せ集めでありながら、随所にこだわりが感じられる。
このようなベスト的なアルバムであるにもかかわらず、寄せ集めで終わらせない、デヴラージらしい真面目な仕事だなと思う。

| 音楽(HIPHOP) | 03:31 | comments(0) |
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